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夏の合宿が、どこだって?
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秀も祐也も相変わらずだ。
二人一緒じゃない時は、無いのではないかと思わせるほどに。
何度もサークルの集まりなんかは有ったけど。今日は秀は家の用事で、帰ってしまっている。祐也がブスくれているけど、そんなことはどうでも良い。
進行してる先輩たちにも、どうでも良いことらしい。そりゃそうだ、と敏行は思う。
所かまわずイチャ付くバカップルの片割れがいないことは、本当にどうでも良い。というか、イチャ付かれなくて、清々しい。
「滝さんまで、何で不機嫌なんですか……」
この人については、本当にわからないんだけど。というか、いい加減秀のことあきらめたら良いのに。
「あやちゃんが、しつこいねんて」
どうやら、秀のこと絡みでは無かったらしい。あやちゃんと滝が呼ぶのは、あのやたらと滝に絡んでくる女の人か。
どうも秀を敵対視してるみたいで、俺は好きになれない。まぁ、客観的にみたら、可愛い人なんだろうけど。
自分の外見がどう見えるか、しっかりわかってて、相手を操ろうとしてくる人だ。そういう意味でも、好きになれない。
まぁ、好きな人は、勝手に彼女に振り回されたら良いと思う。
なんで、あの人は秀を敵対視するのか、まったくもって、謎だ。秀が女の子だったら、わからなくもないけど。
秀とそのあやちゃんなる人を比べたら、断然秀の方が綺麗だけど。
「なんかまた、もめ事起こしてるのか。俺を巻き込むなよ」
真さんが、滝に釘を刺してる。
俺も同感です。巻き込まないでください。
祐也は、俺たちが会話してても、会話に入って来ないくらい不機嫌だ。
ムスッとしたまま、前を見ている。前というか、ここでの集まりをする場合の、前だけど。
ホワイトボードが綺麗にされて、新しく書かれた文字。
『夏のバンド強化合宿』
合宿とかするのか。面倒な。これ行っても行かなくても、どっちでも良いよね。強制じゃないだろうな。俺は余分な金はない。
「今年は海でやるぞ。バンド単位での参加だ。一人でも行けないってバンドは無し。バンドの強化だからな」
それは海でやる必要が、どこにある。
いやまぁ、せっかくだから、レジャーもしようとかそういうのは、わかるけども。
というか海の近辺で、そんな都合良くバンド練習できる場所があるのか、というのが謎なんだけど。
「安心しろ、スタジオ完備の安い宿がある。学生にとってもお手頃な。寺がやってる民宿らしいが」
そう言った先輩。パンフレットが回って来た。欲しい人はもらっても良いらしい。
何故に海の民宿で、スタジオ完備?寺がやってる?疑問は尽きないが、たしかに安い値段の宿で、スタジオを借りるのも安く済むようだ。
「民宿の手配も有るから、来週中までに、参加バンドは連絡くれ」
そう言った先輩の言葉で、今回の集まりは終わりらしい。
祐也は何故かじぃっと、パンフレットを見ている。
あれか、夏に海、秀と海、とか考えてるのか?放っておこう。
「滝君、滝君たちは参加するの?」
現れた、あやちゃんなる人が。
いや、バンドのメンバーたちまで付いて来てるし。なにこれ。
「今すぐ返事できんで?俺らんとこ、今日一人用事で帰ってもうてるから。確認取らんとあかん」
最もな答えだ。
「えぇー、一緒に海だよ。楽しそうじゃん。行こうよ」
だから、一人確認取らないといけないって、話し聞いてないんだろうなぁ。
しかも俺ら今いるメンバーも、まだお互いに確認してないし。
この人海にだけ興味が有って、バンドの強化とか、関係なさそう。たまにやる部内ライブでも、この人たちど下手な演奏とか全く気にせずやってたし。
俺らは今のところまだ、部内ライブでも演奏はしていない。だって、まだ完成した曲が一曲もないから。
オリジナルって相当難しい。俺ずっとコピーばっかやってたから、自分の考える演奏とか、まだまだできない。
そういう意味では、この強化合宿、結構乗り気では有ったんだけど……。
思わず真さんと顔を見合わせてしまった。滝の面倒事が待っていたら、嫌だと。
ただでさえ、バカップルにイラッとさせられたりするのに。いや、でも祐也は音楽になると、バカップルぶりはどっかに行くけど。秀もそういう感じが多々ある。音ズレさせた瞬間の、秀の目付きは怖いです。マジで。
音楽やってない間は、バカップルなんだろうけど。もうそこは仕方ないって、あきらめるしかないだろうな。
唐突に、祐也が携帯を取り出している。秀にかける気か。家の用事で帰ったのに。
呼び出し音がずっと鳴ってるみたいだ。俺隣にいるから、聞こえるんだけど。
『はい。こちら秀さんの携帯ですが、ご本人が現在事情が有って出られません。ご用件承ります』
落ち着いた男の声が聞こえた。誰。秀さんの携帯と言ってるから、間違ってかけたわけでもないらしいが。
『おい、純。人の携帯勝手に出るな』
『だって、ずっと鳴りっぱなしでしたよ?留守電機能付けてなかったでしたっけ?』
何やら電話の向こうが慌ただしいのまで、聞こえてくる。
時々ズサッとか、聞こえるのは、何。
『面倒な奴から面倒な留守電が入るから、機能解除してたんだよ。おい、相手誰』
『榊……』
向こうで相手が名前を途中まで言った辺りで、プチッと一回切れた。
何事。結局祐也一言もしゃべってないし。
その後すぐに祐也の携帯が鳴りだす。
『ごめん。ちょっと今……』
電話に出た瞬間秀の声が、間近になった。
けど、言いかけた瞬間に、ズササササとか聞こえたんだけど。本当何事。
「さっきの、誰?」
うっわ、祐也の声が地を這ってる。
『さっきの?アレは太一の片割れ。で、何?』
向こうがなんとなく、静かになったような気がする。
さっきみたいなおかしな音は聞こえなくなった。
太一って秀の従弟だったか?その片割れ?知らねぇよ。まぁ、でも、なんとなく祐也の不機嫌さが消えてる。
「あぁ、夏にバンドの強化合宿やるって話しなんだけど。霊安寺で」
『どこで、やるって?』
絶対に、聞こえていたはずの、祐也の声。でも、秀は「どこで」を強調して聞き直している。
「霊安寺」
祐也がすごく明瞭に答えている。
『……あぁ、あの民宿か。っとヤベ……』
またもやズササササとか聞こえ出す。本当何やってるの?
っていうか秀、霊安寺知ってたのか。ん?こういう言い方してるってことは、祐也は秀が霊安寺を知ってることを知ってたのか。
『よし、俺の勝ち』
『だぁぁぁぁぁ、また負けた』
何やってるのかわからないけど、向こうで自分が勝ったと秀が声を上げてる。それに対して悔しそうな声も聞こえた。
『ごめん。で、霊安寺で合宿だっけ?日程さえわかれば調整する』
秀の言葉に、祐也が「わかった」と言って携帯を切った。
秀、用事あったのに、電話に出て、こっちの要件しっかり聞いてる余裕有ったのか。相手が祐也だからか。多分そうだな。
で、まぁ秀は合宿大丈夫らしいね、良かったね、祐也。何やってるのか、本当に謎だったけど。
祐也の不機嫌さは、見事に無くなっている。もう本当、声聞いただけで、嬉しそうな顔してさ。馬鹿なの?あ、バカップルだったわ。俺もう、祐也のこと、馬鹿だって知ってたわ。
向こうで、あやちゃんなる人は、滝を相手に絡んでいる。
「秀、何だって?」
真さんは、ちょっと離れたとこにいたから、内容はわからなかっただろう。
俺も祐也本人が言うまで言わない。電話の声丸聞こえだったとか、言わない。
「日程さえわかれば調整できるらしいです」
ニコニコとまぁ、さっきまでの不機嫌なブスくれた顔は、どこ行ったんだか。
「そうか、敏は?」
秀が大丈夫イコール祐也も大丈夫。なので、わざわざ聞かない。そういうとこ、俺たちは学習した。
「俺も大丈夫です。寺がやってるだけあって、割安ですよねー。これなら問題ないです」
バイトしてるけど、それほど切羽詰まってるわけでもない。親には、言えば多少は工面してやる、とも言われている。まぁ、音楽ばかりにかまけて、学業を疎かにしてなかったら、とも釘を刺されたのだが。
「俺も大丈夫だし、あそこで絡まれてるアレも大丈夫だろう。……アレの面倒事は、回避可能か?」
「放置で」
俺と祐也が綺麗にハモッた。滝になんか、わざわざかまってられない。
まぁ、練習の時はいてくれないと困るけども。
「うし、先輩に連絡しとく。あー、そういえば、さっさとバンド名決めろとも言われてたな」
そういえば、バンド名決めてないまま、今まできてた。
部内ライブにも出てないし、まだ良いかとも思っていたのだけど。
「ま、それも合宿中になんとかするか」
真さんがそう言って、この場は解散になった。
もちろん、滝については皆放置して帰った。
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