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タイムカプセル #2
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お昼の掃除の時間に淳一は小声で智に話しかけた。
淳一と智は同じ1組の同じ5班。
当然、掃除も同じ場所。
今日は階段の掃除当番だ。
「朝の話、今度の土曜日にしようと思うんだ。」
「え?……竜の木?」
二人は箒で階段を掃きながら話す。
「うん。」
「竜の木って何なの?」
智の問いかけに、淳一はさらに小さな声で
智の耳に手を当てて答える。
「兄ちゃんが言うにはね…。」
そこへ、修が通りかかる。
「ちょっと、ジュン!智に近づきすぎ!」
「なんだよ!」
「近すぎ!」
修は淳一を無理矢理、引き剥がす。
「俺は智と話してんの。じゃますんなよ。」
「じゃまじゃないよ。そんなに引っ付いて話す必要ないだろ?」
「あるから引っ付いてんの!」
今度は智の頭を抱え込んで、耳に口を付ける。
「あ~っ!それはやりすぎだろ?」
修が怒りのこもった目で淳一を見る。
「やりすぎってなんだよ!」
淳一が修の腕を掴む。
「やるのか!」
「やってやるよ!」
今にも取っ組みあいのケンカを始めそうな二人を見て、
智がふにゃりと笑ってつぶやく。
「二人とも、ほんと仲良しだね。」
二人はえっ?という顔で智を見ると、満面の笑みでニコニコ笑ってる。
「ほんとに仲良しに見える?」
修は淳一の襟を掴んだまま、目を丸くする。
「うん。仲良さそう。んふふ。」
「これと?」
淳一も修の襟を掴んだまま、人差し指で修を指差す。
「うん。」
「これってなんだよ!」
修がまたケンカごしに怒鳴る。
「これだよ?」
淳一がまた修を指差す。
「うん。ケンカするほど仲良しなんだって。おいらも混ざる~。」
そう言って、智が二人の間に入っていく。
「智…。」
修が智の、ふっくらした頬に手を添えると、
淳一が強引に智を自分の方に向ける。
「智!修ちゃんに触られたら、消毒しなきゃだめだよ?」
「消毒?なんで?」
「ケガレルんだって。」
「ケガレル?」
「そ。姉ちゃんが言ってた。」
「なんだと!」
修がくってかかるが、淳一は聞かずに智の頬にキスする。
「消毒完了。」
「………。」
智は自分の頬をなでながら、自分に何が起こったのか考えた。
「ジュ~~~ンっ!何すんだよ!!」
修の声が学校中にこだまする。
淳一は箒を放り投げると、笑いながら逃げていった。
「修君、これ、おいらのふぁーすときす?」
智がボーとした顔で修を見る。
「違う、違う!ファーストキスは口だから口!」
「口か…。」
「口は…守ってよ。智のファーストキスが淳一となんて、嫌だろ?」
「嫌じゃないけど……できれば女の子がいいな。」
智は、ぷっくらした頬を微かに染め、潤んだ瞳で修に言う。
その瞳を見て、修も頬を染め、少し考える。
「…女の子がいいの?」
「…普通そうじゃないの?」
修は首を左右に振りながら、智の肩を叩く。
「智は常識に囚われちゃだめだ。
芸術家なんだから、普通と違ってもいいんだよ?」
「そうなの?」
「そうだよ。でもジュンはダメだからね。わかった?」
「う、うん。」
うなずく智を修は抱きしめる。
「ああ、心配だよ。このままウチに連れて帰りたい。」
「大丈夫だよ。修君。心配症だなぁ。」
「…そうだ。今日はウチで一緒に宿題しよう。」
「宿題?いいよ。修君、教えてくれる?」
「いくらでも教えてあげるよ。…でも、二人で宿題するの、
みんなには内緒だからね。」
「内緒?……できるかな…。」
「いい?言っちゃダメだからね!」
そう言って、修は階段を下りて行った。
一人残された智は、ちょっと考えて、持っていた箒で階段を掃き始めた。
後2段で掃き終えるというところで、雅範が階段を駆け上がってきた。
集めたゴミが雅範とともに宙に舞う。
「ごめん、ごめん。」
雅範は顔の前で手を合わせ、そのまま階段を駆け上がって行った。
智はしばらくボーっと考えていたが、ゴミを箒でパッパとばら撒いて
うなずくと、教室に戻って行った。
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