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タイムカプセル #14
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月曜日の朝。
ランドセルを揺らし、眠い眼を擦りながら智が歩いていると、
淳一が走ってきて隣に並んだ。
「智!」
「ジュン君。おはよう。」
「どうだった?すっげぇ怒られた?」
淳一がおもしろそうに聞いてくる。
「すっっっごく怒られた。」
「俺も!母ちゃん、ほんとに角生やすんじゃないかと思った。」
淳一は指で頭の上に角を作る。
「おっはよう!」
雅範の大きな声で二人が振り向くと、ニコニコしながら雅範が走ってきた。
「どうだった?怒られた?」
雅範は二人を見比べながら二人の間に入る。
「怒られたよ~!ついでに兄ちゃんも怒られてた!」
淳一がまた指で角を作ると、三人は大笑いした。
「俺さ、以外に怒られなかった。」
「え?マー君のお母さんが一番怒りそうなのに。」
智が不思議そうに雅範を見ると、雅範は照れくさそうに笑った。
「すっげぇ、怒られたんだけど、無事でよかったって。」
「……俺んちも。」
「……うん。おいらの母ちゃんも泣いてた。」
三人がしんみりしていると、和哉が智の横から、首に抱きついてきた。
「おはよう。智。」
「お、おはよう。」
今にもキスしそうな和哉の態度に智がアタフタする。
「暑苦しい!」
いつの間にか修がやってきて、和哉の腕を外している。
「泣き虫カズはいっぱい怒られたでしょ?」
雅範が面白そうに笑う。
「泣き虫ゆうな!」
和哉が雅範のお腹を叩きながらニヤリと笑う。
「フフン、そうでもなかったよ。」
「え~なんで?なんで?」
和哉は得意げに指を立てて説明する。
「お母さん達が来た時、俺、泣いたよね?
先に泣いたら、怒れなくなるんだよ。」
「え~!あれ、わざとなの?演技?すげぇ!」
雅範は尊敬の眼差しで和哉を見る。
「そんなわけないじゃん。本当は怖かったんだよな~!」
淳一が和哉の目の前で泣きまねして見せる。
「うるさい!」
「修君は?怒られなかった?」
智が修の腕に手をかける。
「怒られたよ~。でも、まあ、仕方ないから。」
修は自分の腕に添えられた智の手が、気になって仕方ない。
「そうかぁ。みんな怒られちゃったね。」
智がニコニコしながら空を見上げる。
先を歩いていた雅範が、
「あれさ、お母さんに言った?」
みんなに向って振り返る。
「言っても信じてもらえませんよ。」
和哉が肩をすくめる。
「俺は言ったけど、信じてくれなかった。そんなことは起こってなかったって。」
淳一は口を尖らせる。
「俺は言ってない。言っても言い訳だと思われると思って。」
修がちょっと寂しげに石を蹴る。
「おいらも言ってない。なんだか秘密にしたくって。」
「秘密?」
その言葉の響きに、雅範がつぶらな瞳をキラキラさせて聞く。
「うん。5人の秘密。5人しか見てない、5人だけの秘密。」
智がふにゃりと笑うと、5人もにっこり笑ってうなずいた。
「智…俺、ずっと智について行く!」
修が智の手を両手で握る。
「修ちゃんはいいから!俺が着いていきますよ♪」
和哉が智のもう片方の手を握る。
「俺も俺も!」
雅範はキョロキョロしたが智の両手は塞がっている。
ニッコリ笑って智の首に抱きついた。
「ちょっと!何するんですか!」
「だって空いてなかったんだもん!」
「じゃ、俺はどうしようかな?」
淳一がニヤニヤしながら智を見ている。
「ダメ!」
修が淳一の前に立ちはだかる。
「何が?」
淳一が修に向ってちょっとすごむ。
「ジュンはあぶなすぎる。」
「どうして?」
「チューとか平気でするし。」
「チュー?誰とチューしたの?ジュン君?」
雅範が興味津々で淳一ににじり寄っていく。
「あ、早く行かないと、遅れちゃう!」
智がみんなを振りきって走り出した。
「待ってください!」
和哉も続いて走り出す。
やばい!とばかりに3人も走り出した。
夏の空はどこまでも青く、朝の柔らかい光が5人を照らしている。
走っていく5人を後押しするように、風が蝉の鳴き声を運んでくれる。
智達は今日は一日、学校中の大掃除だ。
子供たちが待ちに待った夏休みまで、あと少し。
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