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タイムカプセル #15
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「はい~、かんぱ~い!」
生ビールのジョッキを握った5人がガツンとグラスを当てる。
「久しぶり~。」
淳一が修に声を掛ける。
「何年ぶりかな?3年?4年?」
修の言葉に雅範がビールの泡のついた口で答える。
「修ちゃん達がニューヨークに行った時が最後だから…5年?かな?」
「4年ですね。」
和哉がビールをゴクリと飲む。
「んふふ。うまい!」
智が口についた泡をペロリと舐めて、にこっと笑う。
「どうなの?あっちは?」
和哉が修の顔を見ながら聞く。
「うん、まあ、ぼちぼち。楽しくやってるよ。仕事は忙しいけどね。」
枝豆を口に運びながら、修がニッコリ笑う。
「智も?」
そう言って、淳一も冷奴を口に頬張る。
「うん。修君のおかげで、伸び伸び描かせてもらってます。」
「すごいよね~、画伯だよね?画伯!」
雅範が楽しそうに刺身をつつく。
「そんなんじゃないから…。」
智が照れくさそうに首を撫で、ビールを口に運ぶ。
「ジュン君のがすごいよ!社長だよ?」
「いやいや、跡、ついだだけだし…。それより、
雅範の中華屋すごいんだよ。行列のできる中華屋?」
淳一が雅範を見て、ニヤッと笑う。
「はい!雑誌にも取り上げられて、ほんと、毎日忙しい!」
「だから?お前、痩せたよな~。」
修が雅範をしみじみと見る。
「マー君が痩せてるのは昔からでしょ?…和哉は?」
智が冷奴を口に運びながら上目遣いで和哉を見る。
「今?相変わらず、ゲーム作ってますよ。」
智の顔を見て、和哉は思わず微笑む。
「みんな変わらないね~。」
智がふにゃりと笑うと、みんな顔を見合わせて微笑む。
「てか、30越えても誰も結婚しないの?」
雅範がみんなを見回す。
「んふふ。本当だね。」
「忙しすぎるんだよ。」
「俺達に見合う女がいない!」
「お前、上から~!」
みんな、声を上げて笑った。
しばらく話すと、5人はどんどん昔の5人に帰って行く。
懐かしい昔話に花が咲く。
「そう言えばさ、あれ、覚えてる?」
淳一が智の顔をみる。
「あれ?」
店員さんにお代わりを頼み終えた智が、淳一に向って首を傾げる。
「あれ!覚えてない?竜の木。」
「覚えてる!」
雅範が間髪入れずに答える。
「夏だったよね。」
修も焼酎を口に運び、懐かしそうに笑う。
「今はマンションだっけ?」
和哉が雅範に醤油を渡す。
「行って見ない?」
雅範はすでに行く気満々の様子で小皿に醤油を垂らす。
「いいねぇ。行って見る?」
修がみんなを見回すと、みんなも楽しそうにうなずいた。
ほろ酔い加減で店を出ると、タクシーを捕まえる。
蒸し暑いながらも、時折吹く涼しい風が、肌を優しく冷やしてくれる。
場所はみんなあやふやだったので、適当に近くで下ろしてもらう。
「こっちだよね?」
雅範が先頭切って歩きだす。
「あ、…この辺、あんまりかわってないんだね~。」
智が懐かしそうに目を細める。
隣で修がそんな智を見て微笑む。
「ここ曲がったとこじゃなかった?」
淳一が足早に曲がり角に向うと、
空き地のあった辺りが目に入った。
みんなも後を追う。
角を曲がると、大きなマンションが目に入った。
「あ……やっぱり…。」
和哉が残念そうにつぶやく。
そのマンションは、オレンジ色の照明のせいか、
幻想的な雰囲気をかもし出している。
これも、夏の夜の幻ではないかと思わせる。
「木があったのはあっちじゃなかった?」
智がマンションの向こう側を指さす。
「うん。…せっかくだから行ってみようか?」
修が道を渡って振り返る。
「うん。」
智が修の隣に並ぶ。
3人も二人の後に続く。
「向こうで修ちゃんに襲われたりしてないですか?」
和哉が二人の間に割ってはいる。
「え?襲われるって?」
智が小首をかしげる。
「お前、何言ってるんだよ!」
修が顔を赤くして和哉をこづく。
「何もないならいいんです。」
智に向ってニコッと笑う。
「修ちゃん、忍耐強いね…。」
淳一が同情するよ、というように修の肩を叩く。
「な……ばか…違うって……。」
「好きな人と一緒に住んでたら、なるようになるでしょ?普通。」
雅範もニヤニヤしだす。
「向こうじゃ、男同士だって気にすることないんじゃないの?」
淳一もニヤッと笑って修を見る。
「だから、好きの意味が違うから!」
「え~、ほんとに~?」
雅範がクスクス笑うと、修は雅範を追いかける。
「余計なこと言うなよ!」
智がポカンとみんなの話を聞いていると、
和哉が智の腕に自分の腕を絡めて言う。
「あなたは、聞かなくていいからね。」
和哉がニッコリ笑ったので、智もニッコリ笑って返した。
「そうそう。もし、万が一、修ちゃんに何かされたら、
日本に逃げて帰っておいで。俺が慰めてあげるから。」
淳一が智の頭を自分の方に寄せて撫でる。
「ちょっと待った~!」
修が和哉と淳一に気づき、二人を智から離していく。
「ほんと、油断ならないね!」
そう言って、修は智の背中に手を回す。
「行こ。こっち。」
智は修に促されるまま、ふにゃりと笑ってついて行く。
先を歩いていた雅範が立ち止まる。
「あ……!」
雅範の様子にみんな小走りになる。
雅範に追いついたみんなも、あ…と声がでる。
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