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ココロチラリ #2
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俺達のニューヨーク生活は順調だった。
会社が用意してくれた部屋は思ったより広く、
時々、打ち合わせのため出かけて行ったが、
智は東に窓のある部屋で、1日中、絵を描いていた。
智にはこっちの空気があっているようで、
日本からの仕事も、日本に帰ることなくこの部屋で行っていた。
俺の仕事も忙しく、慣れない英語で戸惑うことも多かったが、
家に帰れば智がいる。
笑って迎えてくれる。
そう思うだけで、俺は幸せになれた。
ただ、智の無邪気さ……これだけが、唯一、俺を悩ませた。
仕事を終え、遅い時間に帰宅する。
テーブルの上に、智が作った料理が並べられている。
毎日ではないが、作れる時は智が日本食を作ってくれる。
俺の好みも熟知している智の手料理は、それは美味しかった。
リビングにいないのを確認して、智の部屋を覗く。
智が椅子に腰掛けて、眠っている。
膝の上に開いたままの本が置かれている。
俺はそっと本を閉じると本棚に戻す。
智は無邪気な顔で眠っている。
その姿は普段抑えている、俺の欲求を呼び起こす。
手を握り締め、堪える。
そして、智を抱き上げ、ベッドの上にそっと寝かせる。
ちょうど、俺の目の前に智の顔が近づく。
俺は抑え切れない欲求に負け、ゆっくりと唇を合わせる。
智の唇は柔らかく、温かい。
このまま舌を絡め、抱きしめたい欲求が俺を支配し始めるが、
俺はグッと堪えて、唇を離す。
すると、智が目を覚ます。
「……修君……お帰り。」
「あ……起こしちゃった?」
俺は智の下から腕を抜き、ベッドの脇に膝立ちになる。
「ううん。起きて待っていたかったのに、寝ちゃった。」
「いいよ。遅いんだから、早く寝てて。」
「でも、帰ってきた時に、お帰りって行ってもらえると
ホッとするでしょ?」
智はにっこり笑う。
「……智。」
まただ。また抱きしめたくなる。
「修君……今、キスしてた?」
ギクリとする。
「え?……はは、アメリカナイズされちゃったかな?
ただいま~と思って。……あいさつだよ。あいさつのキス。」
俺の言い訳は通用するのか?
ごまかせるのか?
俺は引きつった顔で智に笑いかける。
「あいさつ?」
「そう。こっちの空気に感化されちゃったね。ごめん。」
「ううん。…いいよ。あいさつならおいらもしないとね。」
そう言って智が俺の唇に唇を重ねる。
「修君。お帰り。」
智がまたニッコリ笑う。
俺の脳みそを何かがガツンと殴りつける。
このまま抱きしめ、唇を奪い、服を脱がせ、思うままに智を抱きたい衝動と
この笑顔を守り続けたい願望。
俺はまたグッと拳を握り締め、精一杯の笑顔で智に笑いかけた。
それからは、俺と智の間であいさつのキスが交わされるようになった。
お帰りのキスがあるなら、いってらっしゃいもあるでしょ?と、
智は俺が家を出る時と帰ってきた時、必ずキスをしてくれる。
このキスを色っぽいと呼べるのかどうかわからないが、
俺達の4年の間の色っぽい出来事は、このキスだけだった。
ああ、一度だけ、俺が強かに飲んで帰ってきた事があった。
あの時、何があったのか、俺は全く覚えていない。
翌日、智に聞いてみたが、智も俺が酔っ払って服を脱ぎ始め、
そのままベッドの上にうつ伏せのまま寝てしまった、とそう言っていた。
何か口走っていないかと、心配してみたが、
智はにっこり笑って、大丈夫、心配するようなことは何もしてないと言ってくれた。
そして、4年が経ち、俺の仕事の都合と、智の都合が重なって、
一時日本に帰ってきたのだ。
懐かしい仲間に会い、子供の頃の気持ちを思い出した俺達は、
明日、ニューヨークに帰る。
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