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ココロチラリ 田舎編 #13
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次においら達はぐるっと家を一回りする。
本当にたくさんの部屋があって、わかんなくなるけど、
家の人の住居部分は西側にあるらしい。
中庭を中心に、北側に一茂さん達の部屋。
西側に千賀子さん、孝助さん、佳代子さん達の部屋。
跡取りは北側の一段高いとこらしい。
西側の3家族は、母屋と廊下で繋がっているけど、それぞれ別棟になっている。
増築を何度も繰り返したのがわかる廊下。
段差があったり、そこから突然洋風になったり。
朝行った、沙良ちゃんの部屋もちょっと洋風。
部屋には入れてもらえなかったけどね。
おいら達の部屋がある東側は元々使用人部屋だったらしい。
おいら達の部屋は広くて、旅館の部屋みたいになっているけど、
他の部屋は四畳半から六畳位のこじんまりとした部屋で、10部屋位ある。
ほとんど使われていなくて、人が泊まりに来た時にだけ使われるらしい。
修君が小さい頃はもっと汚かったんだって。
今は綺麗で、ビジネスホテルみたいな感じかな?
朝、沙良ちゃんと遭遇した洗面所は中央よりにあって、いつもは誰も使っていないから、
沙良ちゃんがゆっくり一人で使ってるらしい。
今朝はおいら達が来てるのを、寝ぼけて忘れてたって言ってた。
おいら達が東側の部屋を捜索?していると、奥の方で、ガタッと大きな音がした。
おいら達はそれぞれ別の部屋を確認していたから、
ドアから顔を出して、お互いの顔を見る。
カズが無言で、音の犯人?みたいに視線を投げてくる。
おいらと修君は、一斉に首を振る。
カズがいきなり、奥に向かって走り出した。
修君、おいらも後に続く。
廊下の端まで行っても行き止まりで何もない。
すると、またガタッと、今度は小さく音がする。
「何?何の音?」
おいらが聞くと、カズがシッと口に指を当てる。
もう一度、ガタンと小さな音。
おいら達は音のする方に視線を移動させる。
目の前のドアの内側から音がするみたい。
カズが確認するように振り返る。
おいら達は、うん、と静かにうなずく。
カズがドアをそっと開けると、そこは物置になっているみたいで、
掃除道具や、シーツが置いてある。
おいら達は慎重に中に入っていく。
中はいたって普通で、おかしいところは見当たらない。
「ねずみ……かな?」
修君が首を捻る。
「ねずみ、出るの?」
おいらは、できれば会いたくない思いを込めて聞いてみる。
「いるよ。イノシシだって出るんだから。」
「イノシシ?」
「そう。野生の。」
おいら達が話してる間も、カズは入念に棚や壁を調べている。
「あ……。」
カズが窓際の床にしゃがみ込む。
「どうしたの?」
おいらが隣に行くと、カズが顔を上げる。
「ここ、……扉がある。」
見ると、床下収納みたいな扉。
でも、取っ手がついていない。
小さな穴が開いてるだけ。
「ほんとだ。どうやって開けるの?」
修君が周りをキョロキョロ見回しながら近づいてくる。
「これじゃない?」
修君は右の棚に引っ掛けてある、L字の鉄の棒を持ってくる。
「正解!」
カズが目を輝かせて答える。
修君がその鉄を床の穴に指し、戸惑うことなく引き上げる。
「ちょ、修君!」
おいらはなんか、嫌な予感がして修君の腕を掴む。
でも、扉はバタッと開いて、大きな黒い口を開けただけ。
三人で中を覗き込む。
床下収納なら、保存用の食料だとか、季節物の防寒具だとか……、
そんなものが入っているはず。
でも、そこにはただ大きな暗い口に、下へ続く階段のようなもの。
「階段?」
修君が下を見つめたままつぶやく。
「たぶん……。」
カズが答える。
「どこかに続いてるのかな……。」
「入ってみましょう。」
カズが修君を見る。
「え?ここに!?真っ暗だよ?」
修君がちょっとビビッて体を引く。
「入ってみないとどこに続いてるかわからないでしょ?」
カズが鋭い目で修君を見つめる。
「危なくない?」
おいらが聞くと、カズはクスッと笑う。
「大丈夫。からくり屋敷じゃないんだから、壁から槍が飛び出したりはしないでしょ?」
「そうかもしれないけど……。」
「人がいる気配もないから、大丈夫ですよ。」
カズが階段の一段目に、手を伸ばしてサッと触る。
手には埃がくっついてる。
「行きますよ。」
カズが修君の背中を押す。
「え?お前が先に行けよ。」
「何?ビビッてるんですか?」
「ビビッてねぇし。」
「じゃ、ほら、入って。」
カズが修君の背中を強めに押す。
「わっ、わぁ~!」
修君が狭い入り口に、ガシッと両手を掛けて留まる。
「な、中、入ってもこれじゃ何も見えないよ!」
修君の声が大きくなる。
カズは辺りを見回し、右の棚から懐中電灯を2本見つける。
「これで大丈夫ですよね?」
修君に1本差し出すと、修君がしぶしぶ受け取る。
「さ、入って。」
「お前が先に行けよ。」
「ここ、修ちゃんの親戚の家ですよね?」
「そうだけど……。」
「修ちゃんが先に行くのが筋ってもんでしょう?」
「そんなことあるか!」
二人が先を譲り合って?だんだん声が大きくなる。
二人とも、暗いから怖いのかな?
「おいらが行くよ。」
おいらは階段の最初の一段に足をかけた。
「あ、智、危ないから!」
カズがおいらの体を止める。
「え?危なくないんでしょ?」
おいらがニコッと笑うと、カズの手が戻っていく。
「そうだけど……。」
おいらはもう一段、下に降りた。
「ああ~!」
今度は修君がおいらの体を止める。
「修君、大丈夫だよ?」
おいらが笑うと、修君が仕方なさそうに小さく言った。
「俺が先に行くから。」
「え?いいよ。修君。」
おいらは修君の手から懐中電灯を奪うと、階段をトントンと下りていった。
「え?わぁ~!智~!」
おいらの後に続いて、修君、カズが入ってくる。
この先に、いったい何があるのか……。
ねずみが出てきたら嫌だけど、おいらはちょっとワクワクしていた。
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