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プロローグ
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いつからだろう
アイツが俺の幼馴染から、
俺のライバルに、
俺の宿敵に変わってしまったのはーー
達とは幼稚園の年中の時友達になった。
キリッとした眉に、鋭く、でもどこか優しい瞳、
高い鼻に幼稚園児にして色気を感じる口元。
その頃から達は格好良くて、
一目見た瞬間に強い憧れを抱いたのは
今でも覚えている。
母親同士が仲良くなって、
家も近かったもんだから
ずっと一緒にいるようになった。
小学校も6年間一緒に登校して、
クラスが離れても一番たくさん遊んでいた。
思春期に差し掛かるよりはずっと前、
それこそ性の知識を得る少し前
だったかもしれない。
異性を意識し始めると、
達がいかにモテるかということを
身に染みて感じるようになった。
俺は時々隣にいると、
プレッシャーに押し潰されそうになってしまう。
だから達のためにも、自分のためにも、
決意したんだ。達の隣に相応しい男になるー
中学に上がれば、ませた男子は服や髪型、
眉や髭を気にし始める。
勿論達もその一人だった。
俺はひっそり全部真似した。
勿論同じ服や髪型には出来ないから、
達の読んでいる雑誌を盗み見ては
母親に気に入ったものをねだり、研究した。
自然と異性への振る舞いも彼に似ていった。
達は運動も得意だ。
俺も元々スポーツは好きだったから
負けないように頑張った。
ただ、走りだけは達に負けた事が無い。
その努力の甲斐あって、
俺も段々と異性の注目を集めるようになった。
本当は達の横に堂々といたくて、
褒めて欲しくて、同じ高さで並びたくて。
それが全てだったから、
最初はどうでも良かったのに。
俺は気付いてしまった、
自分の中に眠る欲深い心に
”まだ足りない、達を超えたい、達を上から見下ろしたい”
俺は達が誰かと話しているのを見ると、
悔しさと、何に対してか分からない嫉妬心とで
潰れてしまいそうになって、
一緒にいるのが辛くなった。
達の横にいるのは俺なのに、という気持ちと、
達の方が人気があることが悔しい、という
二つの気持ちーー
その頃から何故か、
女子に引っ張られても断って一緒にいてくれた
達が、よく俺から離れてしまうようになった。
”もう、戻れない”
不意にそんな気がした
二人の間に見えない厚い壁が
出来てしまったように思った。
受験生の頃には殆ど一緒にいることも
なくなってしまい、俺は達を見かけても
完全にどう接すれば良いのか
分からなくなっていた。
達は達で、俺に何を言うでもなく
横を通り過ぎていく。
”ねえ、俺はもういいの?
俺はお前の親友だろ…。”
そう自分勝手に思うたびに
”自分で突き放した癖に”
ともう一人の俺が吐き出す
そんな間柄になってしまったから、
同じ高校を受験する事も、
願書提出の時まで知らなかった。
そうして時は過ぎて、
高校2年の春を迎えようとしていた。
俺もお前も、すっかり学年の王子様。
1、2を争う王子様。
でも本当は知ってる、
俺はお前には到底敵わない事。
だって今の俺は全部お前の真似で、
全部努力だけで作り上げて…、
本当の俺はお前の横にいるのも
恥ずかしい位なのに。
でもこれだけは言える。
ー俺はお前が好きだった。
それは親友という枠を超えて…
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