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飲食店にて。
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俺と之人は、東亰のとある飲食店に来ていた。
誘われて来てみたものの之人はそわそわとしている。 なんだか、こちらまで緊張してしまう。
一体どうしたのだろうか。
それから、ほどなくして食事が運ばれてきてほとんど無言のまま互いに食事を済ませた。
さすがに気まずさを感じていたとき、之人が口を開いた。
「征次郎さんって… 好きな女性いるんですか?」
「えっ…? 急にどうしたんだい、之人。 」
「あ、いえっ。 特に深い意味はないんですが…
いるのかなって。」
顔を真っ赤に染めた之人は、それはもう可愛くて俺はありとあらゆる理性を総動員させた。
「…之人は、いるのかい?」
…コクッ
之人が無言で頷いた。 俺は衝撃を受けた。
之人が女性と話しているのは見たことがない。
俺が之人にそうだったように、之人は誰かに一目惚れしてしまったのだろうか。
俺は叫びたい衝動に駆られた。思っていた以上に想いが募っていたようだ。
そしてゆっくりと之人の口が動き始めた。
「征次郎さんは… 男性を好きになる男性のことどう思いますか?」
「突飛な質問をしてくるね。 俺はなんとも思わないよ。 その人のことを愛してしまったのなら性別なんて関係ない。 それが俺の考えだ。」
恰好つけて語ってみたが、今の俺の状況がそうなのだから否定することなんてできるはずがない。きわめつけに、聞いてきているのは俺の想い人。 なんとも複雑なものだ。
「…そうなんですね。 征次郎さんの考えは素敵です。 俺の話を聞いてくれますか?」
「もちろんだとも。 話してみるといい。」
「ありがとうございます。 …俺実は一目惚れをしてしまいまして。 ずっと想い続けている人がいるんです。 だけどその人は、俺が手の届くような人じゃなくて。 それに、男性なんです。」
「…手が届くかは之人が決めることではないと思うよ。
届くかは伸ばしてみなければ分からないじゃないか。 伸ばしてみるといい。 それに、さっきも言ったが性別は…あまり気にしなくてもいいんじゃないか? もしものことがあれば慰めてやろう。」
俺は、自分の想いに蓋をして之人にそう言った。
すると、之人は…
「そう…ですね。 想いを伝えてみるのもいいのかもしれません。 たとえ、これからの関係が壊れてしまおうとも…。 後悔はしたくありません。」
そういって、俺を見つめてくる。
見つめないでほしい。鼓動が早まるのを嫌でも感じてしまう。 之人には想い人がいる。
俺が介入してはいけないとわかっているのに。
意を決したように息を吸い込んだ之人。
そして…
「征次郎さん。 俺と…お付き合いしてくれませんか。」
…俺は耳を疑った。 こんなことがあるだろうか。 之人も俺に想いを抱いていたというのか。
俺はとっさに反応することができなかった。
「…やっぱり、男同士なんていざ自分がって考えると気持ち悪いですよね。 さっきのは忘れてください。」
涙目になって之人は掠れた声で言った。
俺の沈黙を拒絶されたと受け取ってしまったようだ。 ここまでくれば引き返せない。
俺は覚悟を決めた。
「違う。 …俺は、大学入学した時からずっと之人の事を思い続けていたんだ。 俺はもともと男が好きなわけではない。 この気持ちについていけず ずっと悩んでいた。 きっとお前だから好きになったんだと思う。 俺からも、どうか付き合ってほしい。」
…之人は静かに涙を流した。 笑顔で涙を流すその姿はまるで天使のようだった。
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