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chapter Ⅱ ※流血あり
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side 黎
いつの間にか寝てしまったらしい。
何度も何度も聞こえる音に
目を覚ました時、
見慣れない場所で戸惑った。
が、すぐにここが
寮の部屋だったと思い出した。
コンコンコンコンコンコンコンコンッ
ドンッ
「い゛っ!?」
『煩い死ね土に還れ』
鳴り止まないノック音に
ドアを乱暴に開け、吐き捨てる。
雪が開いた拍子に頭をぶつけてた
けど知らない。
「待って開口一番がそれ!?」
『還れ』
「漢字、違うよねっ?」
仕事モードじゃないコイツは
非常に煩い。
口、縫えばいいのに。
『何の用』
「あー、食事は?」
『いらない』
「駄目。昨日食べてないでしょ」
分かってるなら訊かなきゃいいのに。
ほら、とか言いながら
無理矢理部屋から引っ張り出して
自分はキッチンに消えた。
ガチャガチャ聞こえるから
何か作るつもりなんだろう。
止めたって無駄、というより
止める行為のが面倒くさい。
ソファに寝転びながら目を瞑る。
すぐに雪が現れた。
「黎、出来たよ」
『へー』
「生返事すぎ」
『わー、おいしそー』
「棒読みだし。せめて見てから
言ってよ」
がっくり肩を落とす雪。
一体、俺に何を求めているわけ?
『悠季』
「え?」
『今の俺の名前』
ここは、もう俺達の居場所じゃない。
お互い偽名に慣れていたほうが
良いだろう。
「そうだね....悠でいい?」
『好きにしなよ』
偽の名前にこだわりなんて
持ち合わせてない。
「じゃあ、オレは?」
ギシリと、スプリングが軋んだ。
耳元にかかる息に目を開けると
艶やかな表情で俺を見下ろす
雪がいた。
「名前....呼ん、ちょっ、れ、悠?」
『何言ってんの?』
すっと首筋に顔を近づけた途端、
雪の動きが止まった。
そしてグッとソファに押し付けられた。
「またやったの!?」
『は?』
「は?じゃないよ、血まみれじゃん!」
『あ?あー』
忘れてた。
思いっきり抉ったな、そういえば。
「自分で傷つけるの、止めてよ」
ぽつりと、言葉が落ちてきた。
整った顔が、哀しげに歪む。
「お願いだから、大切にしてよ。
傷つけてほしいなら、オレがするから。
自分で、しないで?」
こうやってお願いされるのは、今日で
何回めだっただろう?
他人が傷つくのは平気なくせに、
俺が傷つくのは酷く怖がる。
『癖は、直らない』
「れ『だから、』」
『好きにしていいよ』
被せて言葉を投げ掛けると、
雪の視線が俺の顔から首筋に移る。
「ん....」
熱に浮かされたような顔で俺の首筋に
キスを落とした。
最初は丁寧に、ゆっくりと
固まっている血を溶かすように
舌を這わせていたが
「..っ、黎....はぁ...もっと..」
次第に激しく貪るように食らいついてきた。
血には、媚薬効果や興奮作用が
あるときく。
俺の血は病みつき、らしい。
ぼんやりと天井を眺めながら
雪の興奮が治まるのを待つ。
二人きりの部屋に響くのは、水音と吐息。
充満するのは、血の香り....
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