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chapter Ⅲ
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side 黎
カカタカタカタカタカタカタッ
放課後になり、遊ぼうと
しつこく誘ってくるチワワを
巻いて、やっと寮の部屋に帰れた。
カカタカタカタカタカタカタッ
が、ソファに寝そべり
安眠を貪る、事が出来ず口を開く。
カカタカタカタカタカタカタッ
『煩い。やめて』
「っごめん」
さっきから止まることのない貧乏ゆすり
のお陰で全然眠れない。
しかも無意識にやっているから
注意しなければ止まらない。
絶対冷静なコイツがこんにも
落ち着かないのは....
まぁ、大嫌いな奴が来るから?
「やっぱり、止めない?」
『アキに言って』
今日を指定してきたのはあっちだから。
俺は、いつでも構わない。
対してコイツは、これから来る予定の奴と
犬猿の仲。
口を開けば嫌みの言い合い、
目も合わせなければ名前すら呼ばないし
お互いに極力半径二メートル以内には
近づかない。
兎に角全てが合わないのだ。
ピンポーン ....ガチャッ
『雪』
「黎...」
『今更』
事前に鍵は開けてあると伝えていた為
勝手に部屋に入ってきた。
近づいてくる足音に段々歪む雪の顔。
リビングの扉の前で一度止まった足音。
ゆっくりと開かれた扉。
そこにいたのは、琥珀の瞳をした青年。
俺専属の、情報屋だ。
「レイ....?」
『ん?』
「レイっ!会いたかった~」
名前を呼ばれ、反応を返すと
長めのブラウンの髪を靡かせて
ぎゅうっと抱きついてきた。
瞬間、ふわりと香った香水、と
複数の他人の薫り。
『臭い。風呂入って』
「ええっ、そこは俺も、って
抱き締め返す所でしょ!?」
顔をしかめて体を突き放すと
大袈裟に泣かれた。
悪いけど他の人間の臭いを
つけたまま俺に近づかれると
困るんだよね。
だから少し低めの声でもう一度促す。
『アキ。入って』
「はい」
青ざめて素直に従った。
最初から、従えばいいのに。
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