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chapter Ⅴ
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静かに停まった車から降りると
ずらりと並んだ組員達に迎えられた。
「「「「お帰りなさいませ、若」」」」
『ああ』
挨拶に軽く頷いて返し、家に入る直前
ふと足を止めた。
『お前、怪我してるなら休め』
「へっ?」
『右足、怪我してるだろ』
「す、すいやせん!」
本人は隠しているつもりだったとしても
本当にいざというとき使い物にならず、
足手まとい、なんてのはごめんだ。
無理して悪化が一番面倒なケース。
「お帰りなさいませ、若」
『雷』
「お疲れ様でした」
『ん』
玄関で俺を労(ねぎら)ってきたのは、
親父の側近、綾西 雷(あやにし らい)。
背中まである紺の長髪を結って胸元に
垂らしていて、白い和服が際立たせている。
優しげな風貌に垂れ目、
細身でパッと見はヤクザに見えないが
頭脳派とはいえ喧嘩も強い。
元は俺に武術を教えていた師だ。
『親父は』
「蓮の間にてお待ちです」
『そう』
着替えを急いだ方が良さそうだ。
あまり待たせて機嫌を損ねたら面倒だし。
雪と共に数分で支度を整え、
蓮の間に向かった。
「若が到着されました」
「入れ」
開けられた襖。
広い部屋に鎮座していた親父。
出張続きで暫く会っていなかったせいか、
久しぶりに顔を合わせた気がする。
赤い瞳が眼光鋭く俺を射抜く。
全身から発せられる威圧と殺気に
無意識に息を詰めた。
「徹底的にやったか?」
『ああ』
「ならいい」
『ブツは地下に』
「...嵐山組は除名だ」
だと思った。
一番やっちゃいけないこと
したんだし、当然の処置だろう。
時には見せしめも大事だ。
「黎、学園はどうだ?」
『普通』
「無理はするなよ」
『ああ』
頷く俺を見て、ふっと表情が和らいだ。
親父から威圧と殺気が失せる。
この人は、オンオフがきっちりしてる分
差が激しい。
「泊まるんだろ?」
『そのつもり』
「じゃあちょっと付き合え」
『ん』
親父がくいっと酒を煽る仕草をして、
口角を上げた。
「雷、酒持ってこい」
「はいはい」
廊下で控えていた雷に声をかけたのを
見て、俺も口を開く。
『雪』
「え、オレも?」
『そう』
「あー、分かったよ」
どうせ朝まで放してはくれないだろうし
雪だけ先に寝るのは不公平でしょ?
だから、道連れ。
少しだけ気分がいい。
きっと血を見た時の興奮がまだ治まらない
のだろう。
本当はもう少し殺りたかったな、なんてね。
side 黎 END
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