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ホワイトクリスマス(番外編)
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作)これは黎が学園に来る前の話です。
超ぬるいお話し。そして長いです。
見なくても大丈夫だよ!
五万アクセス突破しました!感謝です!
読者の皆様、メリークリスマス!
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side 雪
足元から這い上がってくる冷気に
ぶるっと身震いした。
すっかり陽が落ちて、暗くなった夜中。
十二月ともなると、耐えがたい寒さだ。
活気溢れる大通りから外れた裏路地を
奥へ奥へと進んだ先にあるビルの前で
主が出てくるのを車の側で待っていた。
「あ、どうだった?」
『問題ない』
「そっか。早く戻ろう、寒い」
『あぁ』
白銀の髪を靡かせて出てきたのは
俺が生涯仕えることを決めた、黎。
浮世離れした容姿は見たものを惹き付ける。
男女問わず虜にしてしまう、魔性の美。
オレと黎が乗り込むと静かに発進した。
今日は久々のオフで、黎の武器点検に
付き添っていた。
基本は素手の黎だけど、組同士の抗争
ではそうも言ってられない時がある。
だからこうして、月一で点検に来る。
ウチの組が代々贔屓にしてる修理屋だ。
「ん?ソレ、何?」
『おまけ』
「おまけ?何で?」
黎の顔から視線を外して気がついた。
ビルに入るときは持っていなかった
袋を持っていた。
濃紺の片手サイズの袋には黒いリボンが
かけられている。
「プレゼント?....あ、クリスマスか」
クリスマス。キリストの誕生日。
一般人にとっては大事らしい、イベント。
けど俺達からしたら、普段とさして
変わりはない。重要でもない。
それでも一応、組で毎年パーティを開く。
組員達が食って飲んで騒ぐ日。
ついでにプレゼント交換大開がある。
その程度の認識だ。
勿論強制参加じゃないし、恋人や家族が
いる奴は早退する。
特に黎は騒がしいのは嫌いで、
物欲とか一切ないからプレゼント交換
等も一切参加しない。
最初だけ顔見せして、すぐ部屋に戻る。
必然的に、オレも長居しない。
最近はめっきり見なくなった黎の笑顔。
無表情で窓の外を眺める黎を盗み見る。
一つ年下の中学生にしては大人びた少年。
その心中は誰にもわからない。
『今日はもう好きにしていい』
本家に戻るとそれだけ言って部屋に
籠ってしまった。
恐らく仕事でもしているんだろう。
「お風呂でも入ろっかなー」
好きにしろと言われれば、イコール
暇になるオレ。
外出のせいで大分体が冷えた。
この時間帯なら大浴場も空いてるはずだ。
タオルと着替えだけ持って長い廊下を進む。
この広い屋敷内は慣れない間は迷いやすい。
よく新入りの組員達が迷ってるし。
「うわ、さっむ」
脱衣所で服を脱ぐと途端に鳥肌が立ったので
急いで頭と体を洗い、湯船に浸かる。
じんわりと温かい。
「あぁ、雪斗くん、お疲れ様」
「お、雪斗くんじゃないか。お疲れさん」
「雛野さん、夏目さん、お疲れ様です」
空いているとは言っても、先客はいるので
先輩二人と挨拶を交わす。
この二人は結構古参で、気さくな人達だ。
「もう若のお付きは終わりかい?」
「ええ。早めに暇を頂きました」
「大変だろ、若の側近は」
「まあ、それなりに」
ハハハ、と笑い声を上げる夏目さん。
雛野さんはにこにこと会話を聞いていた。
たまにはこういうのも、悪くない。
「また後でね」
「湯冷めするなよ」
「はい、また後程」
数分後、二人は揃って出ていった。
一人になると静かだ。
しばらくじっと湯に浸かっていると
「っ、」
ばっと後ろを振り返る。視線を感じた。
そこにいたのは最近入ったばかりの
組員だった。
素行が悪く、気も短いので何度か注意した
覚えがある。
「何か?」
「いいよなぁ、若頭側近てのは。
ただ付いて回ればいいんだからさぁ」
「そうかもしれませんね」
オレを見たまま動かないので声を掛けると
舌打ちが返ってきた。
何故か初見から敵対視されていた。
「はんっ、その歳で側近とかぜってぇ
コネだろ?」
「コネではありませんが」
「親の七光りが、」
たまに、こういう奴がいる。
とんでもない、勘違い野郎が。
「あのガキも、若頭だからっていい気に、
うっ!?」
ぶつりと、オレの中で何かが切れた。
「撤回していただけますか?私のことは
いくら罵ってもらっても構いませんが、
若に関しては別です」
「がはっ....くっ」
態度のデカイ小者ほど、
重圧に耐えられない。
グッと威圧を描けると、苦しそうにもがき、
酸欠の金魚のようにパクパクと口を開閉。
ふっ、と失笑する。
何故こんなのがウチの組に入れたのか
大いに謎である。
「撤回していただけますね?」
威圧を一切緩めずに問いかけると、
必死にうなずくので威圧を解く。
そのまま振り返らずに湯から上がり、
手早く体を拭いて浴衣を身に纏い
大浴場を後にした。
ー2時間後ー
風呂での出来事がどうも抜けきらず、
会の間はずっと不快だった。
もう少しいたらどうだと絡んでくる
酔っぱらいをかわして
クリスマス会を例年のごとく
早々に退散した黎の後を追う。
部屋から出ると冷気に襲われ、
浴衣の袂を締めた。
「黎?」
黎少し歩いた先に立っていた。
じっと顔を見られて少したじろぐ。
「えっと、どうかした?」
『何か合ったよね』
疑問系ではなく、断定している。
そんなにオレは分かりやすかっただろうか。
合ってすぐに言い当てられるとは。
「煩い虫がいただけだよ」
『そう』
笑って誤魔化したけど、多分誤魔化せてない
んだろうなぁ。
他人の感情には鋭いからね。
それでも深く聞こうとはしないのが嬉しい。
『外』
「何?」
『雪』
スッと黎が指し示したのは窓。
つられて視線を動かすと
「あ.....」
雪が、降っていた。
ふわりふわりと白い塊が舞い落ちる。
明かりに照されて、黎の髪のように
煌めいている。
「じゃあ今日はホワイトクリスマスだね」
『メリークリスマス』
「....!メリークリスマス」
黎が気遣ってくれたのが嬉しくて、
先程まで残っていた不快感が失せた。
やっぱり黎は偉大だ。
それからしばらく俺達はその場に
佇んで雪を眺めていた。
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