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chapter Ⅸ
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side 黎
自分の身惜しさにあっさり
地面に転がるゴミを見捨てた
あの子供はどうせすぐに消される。
だから手は出さなかった。
ゴミを一瞥して
溜め息を吐き出す。
後始末が面倒くさい。
この程度で気絶するとは思わなかった。
♪~♪~♪~♪
タイミングよく、着信音が響く。
相手がわかっているから
表示を確認せずに電話に出る。
『何』
「ふふっ、派手にやらかしたね?
格好良かったよ」
『あっそ』
「後始末はやっておくからさ、
アレ、壊シテイイヨネ?」
『ん』
どうせ駄目だと言っても聞かないくせに。
どこで見てたのか知らないけど
このタイミングで掛けてきたなら
全部見てたんだろう。
可哀想なあの子供は今日が命日かな。
端末越しにアキが嗤ったのを感じた。
愉しそうに、言葉を紡ぐ。
「俺の前でレイの悪口言うなんて
良い度胸シテルヨネェ?」
『アキ』
「なぁに?」
『するならバレないように』
「分かってるよ。後でね、レイ」
俺の周りに、まともな人間なんていない。
普通じゃないからこそ成り立つ関係もある。
迂闊に近づけば命を落とす。
だから全員、身をもって体験するといい。
アキの俺への依存は普通じゃないって?
知ってるよ。それを利用してるから。
あの狂気あってこそのアキだよ。
俺に一切害は.....なくもないけど。
とりあえず後始末はしてくれるようなので
シャツに付いた血を隠すため、脱いでいた
ブレザーを羽織り寮へ向かう。
『俺も.....、』
普通じゃない。
人を傷つけることに対しての抵抗はない。
血を見ても何とも思わないし
骨を折る感触にも慣れた。
苦痛に呻く声も恨みつらみも聞き飽きた。
初めて人が死ぬ瞬間を目にしたとき、
確かに俺は「落胆」した。
悲しみはなかったと思う。
可哀想だとも思わなかった。
無様に命乞いをした割りに、呆気ない「死」
つまらないものだと、そう感じた。
泣き叫んでも、媚び諂っても、
等しく訪れる死は同じだ。
自分がぶっ壊れてる自覚はある。
そもそもまともな人間なんて存在するのか?
まともな定義って何?
誰が決めたの?
普通って、何だろう?
幼い頃、大人にこれらの疑問をぶつけては
得られない答えに落胆したものだ。
環境が環境だけに。
『何してるの』
「オレより先に行ったはずなのに
オレより遅いってどういうこと?
心配したんだよ?」
『頼んでない』
「ちょっと!?」
『煩い』
「はぁ....」
わざわざ寮の部屋の前で待っていたらしい
雪の説教を聞き流して中に入る。
過保護な側近はそろそろ換え時だろうか?
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