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夕焼けは媚薬 8
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久しぶりに名前を呼ばれて、顔がかぁーっと熱くなる。
でもそんなことを悟られたくなくて、語気を強めながら言い返した。
「何がよく出来たねだよ! さっきから意味がわかんねぇんだよ!」
「相変わらず鈍いな」
そう言ってクスクス笑う新藤を見ていると、なんかバカにされたみたいで気分が悪い。
「ちゃんと説明しろよ」
すると新藤はクスリと笑いまた俺の髪をすきながら話し始めた。
その眼差しはとても暖かくて、くすぐったくてちょっと気まずくなるくらい。
そして、俺に向けられている声はすごく優しかった。
「千秋の気持ちが聞けて嬉しい。やっと言ってくれたね」
「まさか合格って……」
「どうやったら千秋に意識してもらえるかいろいろ考えたけど、やっぱり効果てきめんだった」
「もしかして……」
「僕の気を引こうとして派手なシャツ着てきた千秋は最高に可愛かったよ」
新藤は「あれ、どこで買ったの?」なんて言いながら思い出したのか肩を震わせながら笑っている。
効果てきめんって……。
ってことは、俺は……俺は……俺は、新藤にずっと踊らされていたのか!?
「ふ、ふざけんなよっ! 俺がいったいどんな思いをしたと思ってるんだ!」
「どんな思いをしたの?」
こういうケロッと涼しい顔で聞いてくるところが腹立つんだよ。
そんなの絶対に言ってやらねぇ。
それに、こっちには聞きたいことが山ほどあるんだ。
それに一番の問題といえばやっぱりこれだろう。
「なんでマリエちゃんと帰ってたんだよ。付き合ってんだろ?」
「誰がそんなこと言ってるの?」
「クラスの女子……」
そこまで聞くと新藤はハーっと大きなため息をつく。
「僕が彼女に興味ないのは千秋も知ってただろ?」
「だ、だってお前が腰とかに手を回してやがるから悪いんだ」
「ふーん。だから妬いたんだ?」
「だっ、誰が!? 妬いてねーよ」
噛みつくように語気を強めて返しても、新藤はクスクスと笑いながら言うだけで。
「僕のこと盗られると思った?」
「…………」
マジで、うるせーよ。
そう思いながら思わず黙り込んでしまった。
でも黙っていたら新藤に図星だと悟られてしまうことに気付いたときには遅くて。
「大丈夫。僕は最初から千秋のことしか見てないからさ」
サラッと言ってしまうこいつがムカついてしょうがない。
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