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背中合わせ 12
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午後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、教室に戻るともう修平の姿はなかった。
「なぁ、修平は?」
「新藤ならさっき帰ったぞ」
俺も急いで教室を出て下駄箱に向かうと、門のそばを歩いている修平を見つけた。
靴を履き替えて、後ろから修平を追いかけてその腕を掴む。
「待ってくれ」
修平はなにも言わずに振り返り、ただ冷たく俺を見た。
そして手を振りほどくとまた歩いていってしまう。
「待てよ。さっきのだって本心じゃないんだろ? カナに何か言われたんだろ?」
「……本心だけど」
その言葉の一つひとつに、また心臓を打たれたみたいに苦しくなる。
きっと何か事情があるんだ。
修平がそんなこと言う訳ない。
心の中で何度も唱えて自分を奮い立たせる。
「わかったぞ。前みたいに俺を焦らせようとした芝居だろ?」
そう言ってみても修平は反応することなく歩いていく。
挫けるな、俺。
負けるな、俺。
ここで諦めたら修平を永遠に失ってしまう……。
そんなの、俺の世界は真っ暗になっちまうじゃねぇか。
「……事情があるんだろ? 俺に言ってくれよ! 何でもするから」
何だっていい……。修平の力になりたい。
すると。
「……何でも?」
修平はそう言って立ち止まった。
やっと話してくれる気になったんだと思い、俺も顔を上げるが……浮上した気持ちは、また落とされる。
「……じゃあ、早く別れてよ」
音がまったくしない部屋に閉じこめられたかのように雑音が消え去る。
聞こえてくるのは異様に速くなり大きな音をたてる自分の心臓の音だけ。
ドクン、ドクン、ドクン……。
修平の目は氷のように冷たくて、淡い期待なんかをいっぺんに削ぎ落とされたような気がした。
「……嫌だ」
「何でもするんだろ?」
「それだけは、嫌だ」
そう言うのが精一杯で、湧き上がる涙で胸が詰まる。
手は震え、足は竦み、立っているのもやっとだ。
「俺は……別れたくない」
泣いたりして格好悪いとこ見せたくないのに、涙が溢れて止められない。
でも、俺が泣いても優しく涙を拭ってくれる人は……そこにはいない。
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