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長いながい一日 17
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修平はクスクス笑いながら不機嫌そうな俺の頬を軽く撫でた。
「なにが、おかしいんだよ。俺は真剣に言ってんのに」
すると、今度は笑いながらも少し困ったように小さくため息をつく。
「そんなことで悩む必要なんてないのに」
「そ、そんなことって、俺にとっては……」
言いかけたところで修平がじっと俺の目を見るから思わず黙ってしまった。
「あいつが性格悪いのは千秋だって知ってるだろ? 千秋には僕の話ばかりしてるかもしれないけど、あいつさ、僕の前では千秋の話ばかりするんだよ」
はぁ? 俺の話? どうして?
一体、何を話すことがあるんだ? って首をかしげていると修平は続けた。
「呼び方だってそうだよ。僕は苗字で、千秋は名前だろ?」
「それは、俺の名前が女みたいってからかってるだけだろ?」
すると修平はゆっくりとかぶりを振った。
「僕が嫌がるからだよ」
「はぁ? 修平が嫌がるって?」
「千秋の名前を呼んで不機嫌になる僕を見て、楽しんでいるんだろう」
聞けば聞くほど東海林というやつがわからなくなってくる。
それにそこまでわかってて東海林と友達でいる修平も疑問だ。
つか、疑問が晴れるどころか、更に謎が謎を呼ぶというか、疑問だらけなんだけど。
でも1つだけはっきりとわかるのは、東海林がすげー性格が悪いって事だ。
いや、これは前から知ってたか。
「じゃあ、東海林が必要以上に修平の話をしてくるのも……」
「千秋の反応をみるのが楽しいんでしょ。嫉妬したりしたの?」
「めちゃくちゃ性格悪……」
「まぁ、東海林の厄介なところは、何も悪気がないところなんだよね。誰に対してもあんなんだし、人が嫌がったり焦ったり困ったりする顔が何より好きなんだってさ」
人が嫌がったり困ったりする顔が何より好きとか、さすが真性のサド……というか、それ以上?
「サドっていうより悪魔だな」
俺がボソッと呟くと修平も大きく頷いた。
「まぁ、そんなんだから藤原さんにも振られるわけなんだけどね」
は? 振られる? 藤原さんに?
修平は何気なく呟いたようだったけど、俺の耳はそれを聞き逃しはしなかった。
「え!? ふ、藤原さんって。航に紹介したあの藤原さん!?」
「そうだよ。東海林の元カノなんだけどね」
「も、も、も、元カノー!? なに、お前そんな大事なことしれっと言ってんだよ!」
「大事なことでもなんでもないでしょ?」
いやいやいやいや、大事なことだろうがよ!
それなのに、なんだ修平は!
俺はこんなにも驚いているのにきょとんとした顔をして首を傾げている。
こっちは驚きすぎてどうにかなりそうだというのに。
「つか、お前……東海林の元カノって知ってて、よく航に紹介できたな」
「藤原さんと航くんって合うと思ったんだよ。それに……僕だってやられっぱなしは嫌だしね」
それは東海林にって意味だろうが、そう言って微笑んだ修平の目には少しぞくっとする怖さが垣間見えた気がした。
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