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浅黄が綾倉家に来た日 3
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「お仕事は何かしてらっしゃるの?」
「バーテンダーをしています」
「バーテンダー?
うちに水商売の人が住む日が来るとは。
夜に働いて、朝帰ってくるんでしょ。
それなら、あまり一緒に住む意味はないんじゃないかしら?」
綾倉が口を開きかけたのを、綾倉の母は「あなたは黙ってて」と遮った。
「毎日、仕事から帰ってきた時に、顔が見られるのはうれしいです。
綾倉さんは寝てるでしょうけど」
「寝てるから、いいのかしらね」
浅黄は反論しようとしたが、綾倉の母は話題を変えた。
「大学はどちら?」
「大学は行ってません」
「行ってないの? どうして?」
「行くほど頭が良くないですし、勉強も嫌いでしたから」
たとえ、行きたかったとしても、経済的理由で断念していただろう。
「まさか、高校中退とか言わないでしょうね」
「一応、卒業してます」
「そう、それ以上は聞かない方が良さそうね。
ご両親は健在?」
「両親は子供の頃に離婚して、それ以来、父とは会ってません。
母は、3年前に亡くなりました」
「お母様は何で亡くなったの?」
「病気です」
「離婚の原因をうかがってもいいかしら?」
「自分は小さかったので、あまりよくわかりませんが、たぶん、父の暴力だと思います」
「まあ」
綾倉の母は、返す言葉がないという反応だった。
浅黄は話をすればするほど、減点されていく気がしていた。
綾倉の母をがっかりさせるのは、綾倉に対して申し訳ないと思った。
「あなたの言う通り、生きてきた環境が全然違うのね。
あなたたち、どこで知り合ったの?
あなたのお店にこの人が行ったの?」
「違います。
当時働いていた会社の使いで、綾倉さんに書類を届けに行ったんです」
「会社勤めもしていたの?」
「はい。母が望んだので。
でも、死ぬほど退屈でした」
「なぜ、辞めたの? 退屈だから?」
「リストラにあったんです」
「あなたが退屈そうに仕事してたからでしょ。
退屈してたから、この人の誘いに乗ったの?」
「そういうわけじゃないです。
よく、綾倉さんが誘ったってわかりますね」
「だって、あなたから誘うなんて考えられないでしょ」
「綾倉さんのために、理由は聞きません」
浅黄の言葉に綾倉の母が笑った。
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