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元同級生 1
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浅黄の休みは週に2日ある。
店自体が休みの日曜と、平日にもう1日。曜日は決まっていない。
日曜日は綾倉と一緒に過ごす約束をしているが、平日の休みは友人たちと飲みに行くことが多い。
綾倉の休みは土日だが、ほぼ毎週土曜日は趣味である乗馬に一人で出かける。
お互い、自分の時間を持つことに不満はない。
元同級生の小山から電話があったのは、出勤のために渋谷駅に向かっているときだった。
「今度、みんなで集まろうって言ってるんだけど、浅黄も来ない?」
「夜は仕事だから無理だな」
「休みの日は?
浅黄の予定に合わせるよ」
彼女の言う「みんな」とは、東京にいる元同級生の男3人、女3人だ。
今までも、2か月に1回程度、飲みに行くメンバーらしい。
名前を聞いたが、元カノだった祥子以外は、あまり交流がなかったメンツだった。
翌朝、仕事を終えて、スマホを見ると、小山から飲み会の場所と時間を知らせる連絡が入っていた。
当日、浅黄が店に入ると、小山が「こっち!」というように浅黄に向かって手を振った。
すでに全員そろっていた。
まるで合コンのように、男女別れ、女子側は奥から佐伯、祥子、小山、男子側は塩谷、橋本、田村が座っていた。
田村の横に座ろうとしたが、小山がそっちは男3人で窮屈だからと、自分が田村の横に移り、祥子の隣を開けた。
「浅黄クンは変わらず、イケメンだね~」
卒業以来の佐伯の言葉に、小山が自分の彼氏を褒められたかのように「でしょー」と答えた。
「田村君は、変わらず、じゃがいもだけどね~。
浅黄が隣に座らなくて良かったでしょ」
席を替わった自分に感謝しろ言うような口調だった。
「市川みたいにイケメンより、こういう顔の方が女子は安心するんだよ」
思わぬ飛び火に、田村が反論した。
田村は昔から、顔つきがジャガイモのようだと言われ、それは大人になっても変わらずあか抜けていなかった。
「え~、彼女いないくせによく言うよ~」
容赦なく小山が追い打ちをかけ、皆が笑った。
とりあえず、最初は乾杯と言うことで生ビール中ジョッキを全員頼んだ。
交流がなかっただけに、思い出話に花が咲くということもなかったが、浅黄は適当に場を盛り上げた。
相変わらず、ビールが進まない祥子のビールを浅黄が飲みほした後、二人で次の飲み物を頼むべく、飲み放題メニューを見た。
「カクテルでも飲めば」
「何頼んでいいかわかんない」
「カンパリ・オレンジは? オレンジジュースだよ」
「じゃあ、それにする。浅黄クンは?」
「俺は日本酒にする。
飲みほの日本酒は、銘柄が書いてないのはたいていまずいけど、ここは書いてあるから」
「3つあるけど、どれ?」
「右から順番に飲んでいく」
そんな二人の様子を、橋本がじっと見ていた。
「二人はまた、つきあってんのか?」
「つきあってねえよ」
橋本がほっとした表情を一瞬浮かべた。
「つきあっちゃえば。いい感じだぜ」
そんな橋本に気付いていない様子の塩谷が口を出した。
「祥子は、俺なんかより、お前らみたいに、ちゃんとしたサラリーマンが向いてんじゃね?」
橋本の顔を見ながらそう言うと、ちょっとうれしそうな顔をしたので、あまりのわかりやすさに浅黄は笑った。
浅黄の返事に小山も賛同した。
「私もそう思う。
こんな昼夜逆転した飲んだくれのバーテンダーじゃなくてさ」
「小山が市川に気があんじゃないの?」
さっきの仕返しとばかりに、田村が言った。
「なんだよ、俺に気があんのかよ」
「ちがうよ!ばーか」
大して親しくもなかった同級生たちだったが、浅黄は予想以上に楽しい時間を過ごした。
ジャガイモ顔の田村と再会したのは、みんなで集まった日から、2週間ほどたった夜のことだった。
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