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紅葉の季節 9
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綾倉と謙一郎が向かったのは、以前、浅黄を連れて来た牧場だった。
かつて、付き合っていたころに二人でよく来ていた。
牧場のオーナーは、二人が一緒に現れたのを見て、「懐かしい」と喜んだ。
二人は連れ立って、牧場の外に馬を走らせた。
見晴らしの良いスポットに来ると休憩した。
「こうやって、二人で馬に乗って、山の中を走っていると、10年間・・・正確には12年間、会っていなかったなんて嘘みたいだ」
「そうだな」
そう答えた綾倉の横顔を謙一郎は見つめた。
先日、コンサートの帰りに食事に行ったときは、綾倉はあまり自分のことを話さなかった。
謙一郎の海外生活のことや、共通の友人のこと、仕事の話ばかりだった。
ずっと、壁を作られている気がして、一緒にいた子のことを聞けなかった。
その壁が今は感じられない。
今だけじゃない。
ここに来るまでの車の中でも、二人とも、10年前に戻ったかのように、お互いが横にいるのが自然だった。
謙一郎は、綾倉がいつも自信に満ちているところが好きだった。
何があっても自分を支えてくれる気がしていた。
そんな彼に別れを持ち出したのは自分だった。
海外勤務となり、現地で親しい相手ができたからだった。
あの時、別れたいという自分の言葉に、綾倉はただ「そうか。わかった」と言っただけで、理由さえ聞かなかった。
2年後、共通の友人から、綾倉が結婚したことを聞いた。
その友人は、綾倉は恋をする気をなくしてしまったようだと言った。
自分は彼の自信を打ち砕いてしまったのかもしれない。
彼は今、どんな気持ちで自分と一緒にいるのだろうか。
「君が結婚したって聞いた時は驚いたよ」
「そうだろうな」
「藤原君から聞いたけど、別れたのは最近だって?
こういっちゃなんだけど、結構続いたね」
「最初から愛情がないんだから、別れる理由もなかったんだろ」
「別れた時はいろいろあって、それ以来、飯塚さんとは疎遠になったんだって?」
「藤原はそんなことまで話したのか」
綾倉は苦笑した。
「僕との関係が続いてたら、君は結婚はしなかっただろうし、だから、飯塚さんとの友情も続いてただろうって」
「結婚も離婚も、自分で決めたことだから仕方ない」
「それは、今朝会った子と関係してるの?」
「まあ、いいじゃないか、その話は」
話したくないということかと謙一郎は察したが、あの若い子のことは聞きたかった。
「彼と一緒に住んでるの?」
「そうだ」
「驚いたな」
「なんで? 若いからか?」
「ああいう子を家に置いとくってことがだよ」
「『ああいう子』って、どういう意味だ?」
「藤原君が言ってたよ。
君が僕と別れてから、若い子を金で買ってるって」
「余計なことを・・・」
「だから、藤原君は僕に期待しているそうだ」
「藤原に頼まれて、遠出しようって言いだしたのか」
「頼まれたからじゃない」
謙一郎は、こちらを見ない綾倉を見つめ続けた。
「なあ、今晩、泊まっていかないか?」
綾倉が謙一郎の方に顔を向けた。
「若い子とのお遊びは終わりにして、また、ちゃんとした恋愛をしないか?」
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