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ブルームーン 3
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イベント会場は、男たちの熱気でむんむんとしていた。
ペアは手をつなぎ、離したらその場で失格になる。
1回勝負だ。
浅黄と黒澤はどっちの方向に進むか相談し、合図の鐘とともに駆け出した。
藤井たちはすぐに浅黄たちを見失ったが、男たちの迫力ある闘いを楽しんだ。
終了の合図が鳴っても、戦いをやめようとしないいくつかのペアを主催者が制止した。
藤井は、黒澤の頭に帽子が残っていることを確認した。
優勝者の確認は、これまた、運動会の玉入れのごとく、カウントと共に奪った帽子を投げ捨てる方式だった。
そして、優勝したのは、浅黄と黒澤ペアだった。
浅黄たちが喜ぶ横で、藤井が複雑な顔をした。
「コンサートのチケットは、2位の賞品なんだ」
「先に言えよ」と黒澤は言ったが、「先に言われても、2位を目指すのは難しいぜ」と浅黄が返した。
優勝は賞金3万円だ。
とりあえず、2位のペアに交換を頼んでみようということになったが、残念ながら、そのペアはもう帰ってしまっていた。
仕方がないので、賞金を軍資金として、皆で飲みに行くことにした。
「悪かったな」
謝る浅黄に、藤井はとんでもないと首を振った。
「片思いの彼を喜ばせなくて残念だったな」
「自分が出てたら、優勝はおろか、3位にも入れてなかったと思うから。
でも、その代わりと言うわけじゃないけど、この辺に雰囲気のいい店、知らないかな?
特別な夜に使えそうな」
「ホテルの上の夜景のきれいなレストランとか?」
「男二人だから、それはちょっと・・・。
いい雰囲気のバーとかないかな?」
4人が顔を合わせた。
藤井は何か悪いことを言ってしまったかと心配し始めたところで、酒井が浅黄を指さして言った。
「それなら、こいつの店がいいんじゃないか」
藤井は浅黄が働いている店の様子を詳しく聞いて、満足した表情を浮かべた。
「特別な夜って、何があるんだ?」
浅黄が聞いた。場合によっては、店で何か用意できることがあるかもしれない。
藤井はうつむいて少し考えていたが、顔をあげ、恥ずかしそうに答えた。
「初デートなんだ」
みなが「おおっ」と声をあげた。
「それは特別だな」
「転勤前に、気持ちを伝えられたらなって。
でも、さっきも言った通り、片思いだから、一緒に行ってもらえるかわかんないけどね。
もし、相手が来てくれたら、その時はよろしくお願いします」
藤井はそう言って、浅黄に頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願いします」
浅黄も頭を下げた。
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