アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
<4>
-
「おはよう、木崎君!さっそくなんだけど、検品したらこっちが指定したエディションと違うシートが3枚あるわけ。これどうするの?」
短い忌引きが明けて出勤した俺は笹川さんの第一声に迎えられた。
「おはようございます。お休みありがとうございました。指定したシートはちゃんと入っていました?」
「それは大丈夫だった、でも送り返すにも送料がかかるじゃない?余計なことしてくれて、というかちゃんと仕事してくれって感じよね」
「とりあえずメールしておきます。送り返す送料分値引きしろって言ったら、面倒くさがってプレゼントしてくれないかな」
「そこらへんは木崎君の交渉力次第じゃない?」
「えええ・・・まあ」
余計なことを言って自分でハードルを上げてしまった。まだまだ全国区とはいえないまでも、少しだけ知られているキャラクター。それが今会社で何とかしようとしている商品だ。
「それと、ICFの月本さん。申請の件で電話があったわよ。忌引きだって伝えたら急ぎじゃないけど出勤になったら折り返し電話くださいって。たぶんメールがモリモリ入っているはず。朝イチでチェックお願い」
休みは週に1日あればいい、ちょっと休むとこの有様だ。鞄を机の脇に投げ置いてPCを立ち上げてから給湯室に向かう。ここの職場はお茶くみ制度はいっさいなく、飲みたい人間が自分で自分の世話をするという明確なシステムだ。棚からマグカップをとりだし通販で買った安いドリップコーヒーのビニールを歯で引きちぎる。
メールがモリモリ……また休みをとらないといけないのか、美野の結婚式。そしてその時シュンと顔を合わせることになる。
チョロチョロと不織布のドリップからコーヒーがマグに落ちていく。この安い商品はマグ一杯分いれるのに時間がかかりすぎてイライラする。わかっている、苛立ちの原因はコーヒーだけではない。シュンとの再会は憂鬱でしかなく、できれば避けて通りたい。それを悲しいと感じている自分を認めて、心が沈んだ。
「木崎君~さっそく電話よ!月本さんから」
背後からの声で我に返る。とりあえず3ケ月先のことを心配してもはじまらない。
俺はマグを片手にデスクに向かった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 48