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あれ?
少し肌寒くなってきた秋口。僕はいつもの場所に楽譜を立て掛け、そして見つけてしまう。
僕は勝手に考えていた、というより信じこんでいた。木崎は雪がちらつくころまで、ここのベンチに座っているはずだと。何かを見つけるまで時間がかかるはずだと、何故かそう思っていた。
それなのに、今日彼は一人ではなかった。ベンチには生徒会副会長が一緒にいて、なぜ1年生で生徒会には無縁な木崎の横にいるのかまったく思いつかない。なぜ一人じゃない?木崎。
僕の気持ちは自分でも驚くもので、なぜこれほどに納得できないのか理解ができない。
窓の外と内、僕らの共通はそれしかなく、それも互いに相手を認識していないというのに。木崎はこちらを一度もみたことがないから、僕の存在を知らないだろう。
僕だけが知っている。そのことに心が沈む。
いつもと違う光景を見ながら練習をすることを諦めて、目を閉じてさらに窓に背を向ける。立て掛けた譜面はそのままでいい、どうせ暗譜しているのだから。
彼らが楽しく会話しているのか、それとも無言なのか。締め切られた窓からは何も聞こえてこない。
僕は必死でホルンを歌わせる。僕はここにいると木崎に知ってほしいのだろうか。
どうして木崎のことが気にかかる?一度も話したことがないし、向こうも僕を知らない。それなのに心にひっかかる。
そして10日くらいが過ぎた日、ベンチには誰もいなかった。枯れ始めた緑の残骸がある畑と空っぽのベンチだけだった。
その光景にショックを受けている自分に、なぜか悲しくなった。
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