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「俺達の腐れ縁は筋金いりだな」
壁に貼りだされたクラス分けの表を指差しながらモリは嬉しそうに笑う。結局高校生最後のクラス替えでも僕たちは一緒のクラスになった。次年度のクラス替えはないから卒業まで同じだ。
「うっひょ~みのっちも同じだ」
僕はそれほど親しくはないけれど、モリと一緒にいるせいで何度か街に出かけたこともあるし、まったく知らない相手でもない。
「ほんと、お前らいつも一緒だな」
後ろから声が聞こえて振り返ると、そこにはみのっちこと美野が立っていた。
「おはよう、美野。モリが筋金いりの腐れ縁だって言うんだよ」
「腐っているというか、すでに発酵している域だな」
全然面白くなさそうな顔で言うから、それはいい意味なのか逆なのかさっぱりわからない。
美野は絵にかいたような本の虫みたいな姿をしている。もちろん髪を染めるようなことはせず、真っ黒。ふちなしの眼鏡をかけ(モリいわく「若さがゼロ」のセレクト)店で吊るされたままの制服を着崩すことなく身に着けている。
でも僕は知っている。眼鏡を外すと細いけれどきれいな目をしているし鼻筋が通っているから、髪形と眼鏡を変えれば絶対にもてるタイプ。おまけに背も高いし。
「ハタケとの仲を裂かない程度に割り込むからな。仲良くしてくれよ、モリ」
「当たり前じゃんか。久田が同じじゃなくて残念」
「ホントだよ」
二人のやりとりを聞きながら僕は表の名前を追った。誰の名前がそこにあっても僕にはあまり関係ない。皆と「仲良く」するだけだ。美野の名前から「あ」行に向かって進んだ視線は一点で止まる。
『木崎 征広』
その1行だけが僕には光って見えたかのように釘づけになる。
あれ以来木崎は一度もベンチに戻ってこなかった。僕はひたすら同じ場所で吹き続けている。
もしかしたら……と少しの期待をもってあの場所にいき、窓の外がいつもと同じ景色にがっかりしつつ安堵する。
廊下の向こうから木崎が歩いてくると、すこしドキっとする。僕より背がのびたみたいだと思いながらすれ違うと、まだ僕のほうが大きい。僕と木崎の接点は相変わらずそんな程度だ。
しかし、それも今日で終わりになる。僕たちはクラスメイトになるのだから。
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