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「なんか、ハタケに似てるな」
僕の目線の先を見てモリが言う。僕はまた見てしまっていたのだと気が付き、バツが悪い。
「なんのこと?」
何を言っているのかわからないよ?と精一杯とぼけてみせるが、いまさらモリが信じるとは思えなかった。僕はいつも木崎を見てしまう。あのベンチに座っていた時には見せなかった顔を教室ではしているから。探し物は見つかったのだろうかと気になって、木崎の姿を追ってしまう。
「木崎の周りにはいつも人がいるよな。あいつ笑っているけど、なんかただそうしてるだけって感じ。皆と「仲良く」しているハタケみたいだなって」
同じクラスになって2週間がたったけれど、僕はまだ木崎と話をしていない。「おはよう」ぐらいは言うけれど、モリと美野がいるせいもあって話すきっかけはまだなかった。
「全然僕とは違うよ。木崎のまわりは女子が多いしね」
そう。木崎のまわりには女子がなんだかんだと群らがっている。笑顔を浮かべて応える木崎の姿に、悪い噂を信じていた人間は「思っていたよりいい人」に認識を変えた。
背は僕よりまだ少し低い、でも確実に抜かれると思う。二重で切れ長の目は少しだけ茶色だ。目を伏せた時に長い睫がその目を綺麗にみせる。太い眉と細い鼻筋、頬骨が少し高い。意志をもったような唇はいつも片方だけ上がっていて、そこにタバコをくわえたら様になりそうだ。もう少し大人になったらずいぶんと精悍な感じになるに違いない。
僕のつるんとしたとりとめのない顔とは大違いだと羨ましく思う。
「あんまり見てると誤解されるぞ?」
モリの言葉で我にかえり、恥ずかしくなって顔が赤くなるのがわかる。
「誤解って……」
「そんなに見つめていると、誰かに変に思われるぞってこと。やっぱりオトモダチになってくださいって言ったほうがいいんじゃね?」
僕のおでこをグリグリしながら、呆れ顔のモリに言われてしまった。
自分でもわからないんだ、どうしてこんなに見てしまうのか……。
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