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できることなら避けたい。正直なこの思いはいつも裏切られる。あげくその裏切りは本人がしでかすのだから、救いがない。
11歳の頃友達が仔犬を飼い始めた。遊びに行くとキャンキャン泣きながらゴムまりのように跳ねる雑種の仔犬に出迎えられた。仔犬を追いかけて抱きとめる。想像以上に柔らかいフカフカの毛と体温の温もりに夢中になった。とても優しい気持ちになっていたのに仔犬は俺の手を逃れようと身をひねった。
このまま握りつぶしてやろうと、こんなかわいいものは自分の手の中にだけ存在すればいい。自分でも驚くほどの強い気持ちが沸き上がった。
でもそれ以上、手に力を入れられなかった理由は真っ黒の二つの目だ。その仔犬は俺の手のひらの中でまっすぐ見つめ返してきた。体はのがれようとのたくっているのに、少し濡れた目を俺に向け続けた。
「殺したいほどにかわいい」それは映画やドラマや小説や広告でもよくでてくるフレーズだが、実際それを理解している人間なのだと、いつも感じる。
幼い頃に自覚した欲することの強さ。問題なのは、気になる相手がつねに同性だということだ。
俺はネコ派ではない。あのひっそり近づいて体を寄せてくる姿や、無関心を装っているくせに捨てられることを恐れていても認めない――それが女性を連想させる。
女性はかわいいと思う。あの信じられないほどの柔らかい体を含め、あまりにも自分と違いすぎる存在は動物に対してかわいいと感じるのと同じ感覚だ。
子猫を撫ぜ、一緒にいることは嫌ではない。ただ子猫に対しては手のひらで潰してしまいたいたくなるほど心が動かないのだ。
避けたいと願うのに、一番近い位置にいる男に握りつぶしてやろうと思うほどの気持ちになってしまう。友達?親友?なんでもいい。気が合い価値観や根っこが同じと思えるから友達になる。
男女の友情が成立するか?それは昔から言われ続けたことで、自分が思うには、これを唱えたのは女のほうだ。さらにそれを実践しているのは強い女だけだと思える。たとえSEXをしても相手を友達だと言えるような人間だけが言えるのではないだろうか。
俺は……言えない。
俺の立場から言わせてもらえば「同性の友情は恋愛になりえるか?」という定義が成立するかという話だ。
無論、答えはノー。世間では成立しない。
この不毛な状況を思春期に何度かつくりあげて、いささか疲れ気味だった。去年まで同じクラスだった中学生の友人。そいつは俺に言った――『征広は最高の友達だよ!』 綺麗な笑顔とともに放れた言葉は、まるで告白のように聞こえた。
最高の友達というフレーズが俺の心をズタズタにしていることを知らずに。
だからもう少し大人になるまで、特に高校生の思春期が渦巻く時期は冷静でいようと決めた。友達という存在に削られるのはもうたくさんだ。
握りつぶされそうな仔犬より、俺はもろい。だから、俺は無関心を装い、誰にも近づかないようにして自分を守ろうと決めた。
もう、友達を好きになって報われない現実には……耐えられない。
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