アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
past:14
-
ベッドに仰向けに寝そべり天井を見つめていた。ここはいつもの自分の部屋で、変わらない視界のはずなのに映るものが違うと感じる。
課題をやる気になれなかった。でもやらなければならない。ため息をつきながらベッドから起き上がりカバンを開ける。中身を机に出し始めた時、指に触った小さな封筒。ユキはこのことを忘れたのだろう、僕だって忘れていた。
ピンク色の封筒は僕の知らないキャラクターのシールで封がされていた。爪でひっかくとペリっと簡単に封が開く。
「波多家君は私のことを知らないかもしれないけれど、私は知っています。いつも穏やかに笑うあなたの笑顔が大好きです。
気が付いたら、いつも見てしまうんです。波多家君を目で追ってしまいます。
私は波多家君が好きです。 夏木佑莉 」
拙い文だった。これを読んだからといって僕の心にはなにも落ちてこなかった。自分の気持ちだけを伝える内容は、感情の押し売りみたいに感じたし、自己満足めいていた。
夏木という今日初めて認識した女子のことは、やはり僕には思い当たる関わりがない。いつも僕を見ていると言われても、いつ見られていたのだろうか。
そして僕は愕然とした――いつもみている
いつも見てしまうのは好きだからだと?だとしたら僕はもう1年近くずっとユキを見詰めている。
「好き」ってなんだ?
誰も好きにならないから誰とでも仲良くできるのが僕なのに。
教室で感情があふれて溺れそうになったとき、あの時杉下を憎いと思った。そして汚いと。あんなやり方をしたユキにも腹を立てた。そして助けてほしいと願った。
……それはユキがキスをしたのが、僕ではなかったからだ
……僕が相手だっていいはずなのに……と
ユキをベンチから引きはがして、僕との時間を奪った副会長にも同じように感じていた。
誰にもユキを取られたくない
ユキは僕のものであるべきだ
この独善的な考えに及んで身体が震えた……僕はユキが好きなんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 48