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<17>―3
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枕の下に置いてある文庫本を取り出した。その借りっぱなしの本はお守りのように毎日持ち歩いてきたからカバーがボロボロになってしまい、今はむき出しの文庫本。
「ママ、アイラブユー/w・サローヤン」
物語のキラキラヒメとママ。ママはキラキラヒメに言う「あなたのパパを世界で一番愛している、でもね、世界で一番憎んでもいる」
音楽準備室に籠ってこの本を読んで、一番心に残った一文。
僕はもう憎むことも諦めることも、心変わりを願うことも辞めた。言ってしまえばいいのだ……傍にいてほしいという言葉が欲しかったのだと。「ユキが好き」あの日それを言いたかったことを。
『同じことを繰り返さなければいい』 そうですね、先生。今度はちゃんと……。
文庫本をしっかり胸に抱いたあと、枕の下に戻す。モリにおはようのメールをまだしていない。部屋の隅にころがっていたトートからスマホを取り出しベッドに戻る。
その時突然部屋のドアが開き、あの男と共に知らない男たちが部屋に入ってきた。
僕は一人ベッドの上――最悪なことに裸のままだった。
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