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ペチペチと頬を叩かれて目をあけた。身なりを整え終わった男たちが玄関にむかう後ろ姿が見える。僕の目を覚ましたのは忌々しい男だ。気は済んだか?
「エロイことして気をやるなんて、随分なタマだな。シュンと呼べば、とことん反応するなんて魔法の言葉みたいじゃないか」
さも可笑しそうに笑う顔を見ても何も感じなかった。僕が淫乱だろうと何だろうと……もう、どうでもいい。
「なあ?そう思わないか?シュン」
シュンって誰だ?僕はそんな顔をしていたのかもしれない。男の目の奥が揺れたから。魔法を手に入れたと喜んだのに、効き目がないと知ったように。そうさ、効き目はない。あんな手にもう二度と乗るものか。
「まあいい、俺はこれから交渉してくる。お前に投資したぶんのモトは取らないといけないからな。なかなかにイイ反応だったから、うまくいくだろう。せいぜい値をつりあげてやるさ」
お前ではない誰かに突っ込まれても、お前でも同じだ。今までと何が変わるというのだ。馬鹿馬鹿しい
「じゃあ、出掛ける」
結束バンドに手が伸ばされる。ああ、これは切ってくれないと、肩が痛くてたまらない。
無理な体勢で無茶をされた関節は悲鳴を上げていた。男は何事か考えたあと、伸ばした手を引っ込めた。
「そうだな、鍵はあけていくか。泥棒でも入ってきて、この姿をみたら面白いことになりそうだしな。客をとらせるのと並行してAVっていうのはどうだ?高く売れるぞ」
何も考えたくない……僕は疲れているんだよ。
「そうだ、いいことを思いついた」
男は芝居がかった仕草でパンと手を叩いた。ノロノロと見上げる――手を叩く暇があったら、これを切ってくれ。
「お前の大好きなあの男。あいつを攫ってくるから、揃ってAVに出るっていうのはどうだ?相当感じまくるだろうな、お前。
あの男もAVがばらまかれたら何もかも失うだろう?普通じゃないもんな、ゲイビだぞ?
俺に喧嘩を売ったバツには軽すぎるが、手始めにはいい。どうだ、いい考えだろう?」
必死に自分を律する。何も考えるな……何も。反応するな……表情を固めろ!
ハタケダイスキ、ハタケダイスキ、ハタケダイスキ
「ふん、まあいい。どこまで強がれるかだな。惚れた男本人を目の前にして、どこまでお前が持ちこたえるか楽しみだ」
男はわざとらしく笑い声をあげながら背中を向けて部屋を出て行った。
どうにか無表情を通せたようだ。
玄関のドアが閉まる音がしてほっと息をつく。こんなことになる前に逃げ出すべきだったのに、しくじった自分に腹が立った。違う、今そんなことをグズグズ考えている場合ではない。
ユキだ、ユキに危害が及んでしまう!
AV?そんなことになったら何もかも失ってしまうじゃないか。僕に関わったばかりにユキがそんな目にあう必要はない。
考えろ……考えるんだ。
腕は使えないし、おまけに裸だ。精液まみれの身体を見下ろしてため息がでる。
このまま外にでるわけにはいかない。
……先生
『私は、かつて救えなかった人の代わりにしている。あなたが自分を取り戻したら、私が救われると期待してしまっている。たぶん、あなたの為ではなく自分の為です』
ごめんなさい、でも今頼れるのは先生しかいない。僕は何としてもユキだけは守らなくてはいけない、他の何を犠牲にしても。
モリにメールをしようとして床に落としたスマホはベッドの下に転がっていた。痺れて感覚のなくなった真っ白の指は、まったく役に立たなかった。
足の指はなんとかなる!空で覚えている先生のクリニックの番号を苦労して押し始め、何度かしくじったあとようやく繋がった。
たのむから、先生、でてください、早く!通話口に声が届くように、僕は床に転がって先生を待った。
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