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「ハタケの本、読んだけどわかんなかった」
モリらしい感想が笑える。
「最後あれ、なに?女は諦めたっぽいけど、あとの二人はどうすんだって話だよ。男だけ二人残ってさあ」
とうとう美野が噴き出した。
3連休を利用して俺達は札幌で結婚式以来の顔合わせだ。モリは「想い」を咀嚼できなかったようで、シュンに恨み言を言い募るものだから、周囲はそれを見ながら笑っている。
「征広と美野はわかるんだろ?どうせ、読書部だし!」
「それがな~モリ。俺だって、ちゃんとわかったよ」
珍しく久田がそんなことを言うので、モリが驚き顔になる。
「え?何がわかったの?」
「んーえっと、征広とハタケがようやく結ばれたってことかな」
まさかの久田が爆弾を落とした。しかしモリはその上であっさり言う。
「ハタケはずっと征広が好きだったじゃんか。いいよ、他の男なら絶対ダメだけど征広ならいい」
ここで冷静な男、美野が盛大に大笑いを始めたので、なんとなく全員が笑うことになった。
「モリに賛成、征広ならいい」
美野が珍しくシュンの腕をそっとつかんだ。
「ハタケがこんな顔をしている、征広が穏やかだ。だからそれだけでいいと思えるし、友達が幸せなら言うことはない。
二人をずっと心配し続けたからな。俺達も待ったかいがあった。
男同士だってことがどうでもいいと思えるから不思議だよ……ずっと二人を見てきたからかな」
さすがの漱石マニアだ、いう事に無駄がない。
「ちょ!おいおい!なに泣いてんだ!征広!」
これ以上ないくらいに狼狽えたり慌てる友達を見ながら、ダラダラと流れるものをとめる術を持ち合わせていない。最近涙もろい。幸せだと感じると簡単に涙がでる。これは制御不能で、なんとなく我慢しなくていいと思えるのだ。
そっとシュンの手を握る。しっかりと握り返されるその存在を想うだけで、この先も大丈夫だと何の根拠もなく思えた。
ようやく俺達は後悔を塗りつぶして未来に生きていける……。
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