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久しぶり、我が家
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「ほら、覚えてる?ここがお家だよ」
病院を出て数分。菜月と葉菜はようやく我が家へ帰ることができた。
葉菜は病院とは違う景色に驚いているようで、少し怯えているようだ。
「ここが葉菜の部屋になる予定だよ。一人で寝るのがまだ怖いかもしれないから俺の部屋にももう一つ葉菜用にベッドを置いたからね。安心して寝てね」
寝室のドアを開きながら菜月は葉菜に話しかけたが、反応はいまいちだ。
「んん…ぼく……ここ…まっしろ、ちがう…」
菜月の肩に頭を押し付けながら言う葉菜はやはり病院とは違う部屋の様子に驚いていたらしい。
「でもこれからは、ここで暮らすんだよ?病院にはあんまりいかないからね」
「…う?」
理解はできなかったらしい。
「今晩、渉が来てくれるからね。ほら葉菜の背がちょっと大きくなったでしょ?お洋服のサイズが合わなくなってきちゃったから買ってきてくれるんだよ。」
「ぼく…ねこさんの……おみみがいい…」
「猫の耳?あぁこの前のパーカーね。渉に言ってみるよ」
ちょっとごめんね~、と言いながら抱いていた葉菜をソファに降ろした菜月は腹ほどの高さのチェストの上に乗った固定電話を手に取った。
「えーっと渉の携帯番号は…っとこれだ」
「あーもしもし渉?うん、帰ったよ。そこでさぁお願いなんだけど…そうそう服のこと。葉菜がね、前に買ってきてくれた猫の耳がついた服が良いって。うん、だから…ごめんね、お願いしまーす」
受話器を置いた菜月はふぅっと息を吐くと、葉菜を抱き上げた。
「フフッ、渉に早く携帯電話を持てって言われちゃった。買うなら葉菜に買うときに一緒にかな」
葉菜は何のことだか全くわからないようで、首をかしげている。
「あっ、そうだ!葉菜のお昼ご飯!わっすれてた~」
急に思いたったため、冷蔵庫に食材が入っているか分からない。
いや、入っていたところでこの家に誰も料理できる人などいないのだが。
「葉菜は何が食べたい?胃に優しいものじゃないとダメだしねぇ…。咲間さんの所に行こうかなぁ…」
「…なつき、どこ、か…いくの……?」
菜月の独り言の内容を理解した葉菜が菜月の腕の中で首をかしげる。
「あぁ、葉菜は知らなかったね。咲間さんってのはね、咲間唯人さんっていうお料理上手な人だよ。昔僕がごはん食べられなくなっちゃったときに治してくれた人。とってもおいしいごはん作ってくれるんだよ」
そして、菜月の数少ない友人だ。
彼は渉とも面識があり、また菜月とも同じ境遇にいる。
彼も独身ながらに、子どもと暮らしている。
ただ菜月と違うのは、その子供が彼自身と血のつながりがあるということだ。
何故引き取ったのか、などの詳しい話は知らないが、久しぶりに会いたくなった。
葉菜の紹介がてら彼の家に行ってみよう。菜月はそう思った。
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