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寛ぎ
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菜月が目を覚ましたとき、辺りは真っ暗だった。
眠りに就く前は明るかった室内だが、今は窓から覗く外の風景も真っ暗だ。
「ん…今何時だ…。」
寝ぼけ眼でポケットに入っているはずのスマートフォンを取り出そうと漁るが、持ってきていないことを思い出した。
「あー…忘れてきたんだ。葉菜…?」
ふと隣で眠っていた葉菜の温もりを感じないことに気が付いた。
未だ目が暗い室内に順応できていないが、気配がないことくらいは分かる。
都季と遊んでいるのだろう。菜月はそう思い未だ覚醒しきらない体を起こし立ち上がった。
明かりの洩れるリビングに入ると珍しくはしゃぐ都季と葉菜の姿があった。
ダイニングテーブルでお絵かきをしている二人は仲良くくっつきあっている。
「おはよ~もう7時だよ。渉が来たら晩御飯にしようと思って。」
二人と同じテーブルに着いている唯人が頬杖をつきながらこちらを向いて言った。
その手元には人型の何かが描かれた紙が置いてある。きっと都季と葉菜が描いたものだろう。
「渉?ここに渉が来るの?」
渉が自分からここに来るなんて珍しい。普段は都季に怖がられるからと言ってあまり来たがらないというのに。
「そうだよ?菜月さぁ、渉にご飯食べにおいでって言ったんだって?部屋に行ったら誰もいなかったって困ってたよ。」
「…あ。」
そういえばそうだった。葉菜が退院する時そんなことも言っていた気がする。
夕方に家に来るとも言っていた。
「あ~…それでか…。渉来るのに都季は大丈夫なの?」
都季は渉が苦手だ。
元来男性が苦手な都季なのだが、唯人や医者のカウンセリングの甲斐あってかトラウマは克服できつつあるらしい。
しかし渉は別だ。彼の筋肉質でガッシリとした男らしい体型が怖いらしく、出会ってかなり経つが今なお怖がられている。
「あ、渉着いたって。僕ご飯温めなおしてくるから菜月迎えに行ってやってよ。」
「えー…上がってきたら鍵開けるんじゃだめなの?」
下まで降りるのは正直面倒くさい。第一渉はこの部屋の場所を知っているのだからわざわざ迎えに行く必要はないではないか。
「荷物が多いんだってさ。僕たちへのお土産と食材を買って来たって。まぁ本当は菜月に渡すために買ったらしいけど。」
そう言うことだから!そう押し切られてしまうとこれ以上は何も言えない。
第一、渉のことを忘れてここに来たのは僕のせいだ。仕方がない、下まで迎えに行こう。
玄関で自分の靴を履いて、エレベーターで地下駐車場まで迎えに行くと渉のゴツイ高級車が目に入った。
トランクは開いた状態で、何やらゴソゴソと荷物を取り出しているらしい。
「渉。」
名前を呼びながら近づくと手を止めて顔を上げた渉がこちらを向いた。
「おお菜月。家に行ってもお前いなかったから焦ったよ。唯人に電話したらこっちにいるって聞いたから飛んできたよ。」
呆れたように笑う渉に菜月は再び謝罪したが頭をクシャリと撫でられて終わった。
なんだか久々に子供扱いされている気分になった。
渉の荷物持ちを手伝って部屋へ戻ると、出たときにはしなかった香ばしい香りが部屋中に漂っていた。
あまりお腹は空いていなかったが、腹の虫が騒ぎ出した。
後ろに立つ渉も同じようでさっきから彼の腹が鳴る音が聞こえている。
荷物を運び入れるためにリビングに入ると、警戒してテーブルの下に潜り込んでしまった都季と、出たときと変わらず無心に絵を描き続けている葉菜がいた。
都季はやっぱり渉が怖いらしく、テーブルの下で睨みつけるような目つきで彼を見ている。
「いらっしゃい渉。もうご飯できるから葉菜くんが座ってるテーブルに座りなよ。菜月もね。」
「分かった。ご飯だぞ都季。葉菜もそれ片しな。」
テキパキとテーブルの上を片付け始めた渉は葉菜の持っていた紙を片付けた。
葉菜はきょとんとしていたが、少しして何をすればいいのか理解したらしく、鉛筆を筆箱に片付けた。
一方で都季は渉に抱きかかえられていた。
いくら言っても机の下から出てこないのを注意されたらしくいつもの活発さは無く、どこかしおらしげだ。
「準備出来たな。じゃあ飯にしようぜ!」
盆にのせられた色とりどりの料理に渉と都季は今にも食べ始めそうだ。
「よし、食うか。いただきま~す!」
唯人の音頭に、4人は食事を摂り始めた。
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