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見た目ヤンキーとの出会い
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俺と伊宮が仲良くなったのには、運命的な出会いがあって…ってそんなものはない。断言する。
伊宮と俺は1年のとき同じクラスで、伊宮はそんときの俺はまだ可愛げがあっただのなんだのって文句ばっかり言いやがって。
伊宮のやろー
ま、それはおいといて。
伊宮との出会いは、高校の入学式。
ちゃんと、伊宮と言葉を交わしたのは、入学式の放課後だった。
俺が本屋に行ったとき、伊宮そこでバイトをしていた。
「あれー、あのマンガ、どこだっけ?」
そのときの俺はちょうどハマっていた単行本の新作を買いに行っていたが、初めて入る本屋だったから、探せなかった。
「あのー、すいません、この本…、って、あれ?もしかして、同じクラスの伊宮、だよな?」
「お前、確か…」
「橘だよ、橘。橘 雪兎。」
「あー…そう。橘。んで、どうした…?」
「探してる本があるんだよ」
「本…?」
「マンガの、『きゅうり大戦争』。」
あの時の俺は何を思ったのか、クラスで怖がられていた伊宮 千影にいつの間にか話しかけていた。
自分でもビビって「ぜってー話しかけねーから!」なんて言っていたくせに。心の中で。
しかもすげー恥ずかしいマンガの名前まで言って。
死ぬかと思った。
いやいや、きゅうり大戦争て。
今どきの子供でもこんなマンガ読まねーよ!
てかよく新作でたな。
冷静に思い返せばそっちの方が驚きだわ
「ブフォwww」
「な、なんだよ…」
急にこいつ笑いやがったぞ。
しかもブフォwwwて。
喧嘩のしすぎで頭おかしくなったんじゃね?
まぁ…喧嘩してるのかはわからないが。
「きゅうり大戦争だろ?オレも知ってるよ」
なん…だと…!
今ここにいるヤンキー?もこの、くだらない題名のマンガを知ってるだと!!
いや、面白いよ、このマンガ!
題名があれだけど…!
「う、嘘だろ……どんな内容か知ってるのか…?」
「当たり前だ、あれだろ、きゅうりが敵の国のトマト姫を愛して、そんでもその国と戦争しなくちゃなねーっていう、話だろ??違ったか……?」
「……。」
いやいや、その通りだよ、そうだよ!
こいつ、まさか本気で読んでやがる!!!
「間違っ、てた、か……?」
「いやいや、合っててたよ!!!もうねすごいあってたよ!」
やめろ、その子犬みたいな瞳!
なんか、その話し方とか表情とか、儚くて、綺麗って思っちゃうじゃん!
ヤンキー?なのに!
「伊宮って、儚いな」
「……はぁ??」
「あっ!あー、いや、バカにしてるわけじゃなくてなんか、喧嘩慣れしてそうじゃん??」
「……。顔に、傷が、あるから、か……」
「へっ?」
いや、そうじゃないの……?
だってピアスしてるし、金髪だし、全然話さないし……、待て。
俺は、人を見た目で判断してしまった……。
またそうやって、バカみたいに、
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!くそっ!」
「お、おい、どうしたんだよ、ここ本屋だぞ??」
「俺の名前は橘 雪兎。高校1年生で、お前と同じ1年3組。ゲイだ。男しか好きになれない。それがわかったのは中2の時。」
「は??おい、急に……」
「俺、今までお前のこと知りもしないで見た目で判断してた。ピアス開いてて、金髪で、傷もあって……本当にごめん!!!」
「え、いや、別に、ほかのやつもそう思ってるはずだし、」
「それじゃダメなんだ!」
俺は人を見た目で判断しない。
それは、その人の事をちゃんと見てない奴がやること。
俺だって、見た目で判断されて嫌だったし、そのせいでムカつくこともあったし、だから、
「俺と友達に、いや、親友になろ、伊宮。」
「は?」
「俺、お前と親友になりたい。お前の事全然知らない。それでも、親友になりたい。」
「変なヤツだな、お前……。」
「よく言われる」
その時、初めて伊宮の優しく笑った顔を見た。
ふつーのどこにでもいそうな、男子高校生だった。
「お前、笑えるじゃん。」
「当たり前だろ」
「だな!」
それが、俺と伊宮の出会いだった。
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