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タイセツナオモイデ5
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それからはまぁ、な。
噂ってのは広がるのが早い。
次の日からオレは女子の胸ぐらを掴み泣かせた最低なやろーと言うレッテルが貼られた。
あれはオレは悪くない。
悪いのはアイツだ。
それでもアイツが”伊宮千影は親に暴力を振るわれている”という事をみんなに教えなかったことは良かった。
でも問題はほかのことだ。
オレはその日からいじめられ始めた。
と言っても殴られる蹴られるなんてのはない。まぁあったとしてもオレは何とも思わないが。
ただの無視だ。
なんてことはない。
そう、思っていた。
人間が一番怖がることはなにか。
昔、誰かに教えてもらった記憶がある。
それは、存在を”無視”されることだ。
居ないものとして扱われる。
オレはみんなに、無視された。
存在を無視された。
オレにぶつかってもオレの方を見向きもしない。前まではこそこそオレの事を噂していた奴も今となってはもう興味も無いのか視界にも入れない。
その時気づいた。
”オレはここにも居ないんだ。”
家に帰ると毎日のように行われる暴力。
謝る時はいつも母親の名前を呼ぶあの人。
学校では居ないものとして扱われ空気のような自分。
オレはここに居る理由があるのか。
オレなんていなくていいんじゃないか。
前に独りでいる時に呟いたことを思い出した。
「死んだ方がマシじゃねぇか」
冗談で言った言葉に現実味を帯びてきて、頭ん中は毎日、死ぬなんて言葉で埋め尽くされていた。
そんな考えのまま高校生になった。
オレの事を知らない人たちがいる高校に行こう。
そう決めていた。
そして誰とも関わらずひっそりと生活しよう。
そんなことを考えていた。
今思えば金髪で怪我しててひっそりと生活はできないと思うけどな。
んで、バイトして……
雪兎と出会った。
こんなふざけた過去なんて嫌いで汚くて何度も何度も死にたいって思ってでも死ねなくて結局、傷跡ばっか増えていって自分も嫌いで毎日毎日呪いのように”明日は死ねる明日は死ねる”なんてつぶやいて、
自分なんて存在してる価値もないと思ってた。
でも雪兎はオレに真っ正面から来てくれて嬉しかった。
オレの事を居るものとして扱ってくれて。
こんな忌まわしい過去。
忘れたくて忘れたくて仕方がなかった。
でも雪兎と出会うために必要な過去と思えば、
「大切な、最高の思い出だろ?」
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