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リクエスト① 1
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【本編160話、執筆後】
ひなピーミル様よりリクエスト《翼が幼児化する薬を飲んで火宮が翼にデレデレする》のお話です。
デレ火宮…書けているかな(汗)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日、俺はのんびりと、街に買い物に出て来ていた。
ふと、大通りから1本入った脇道で、ただの白い布を掛けた質素なテーブルに、紙コップを並べた売り子が立っているのを見つけた。
ドラッグストアの前で、何やら飲料の試飲をやっているらしい。
「ふぅん…」
何だろう?と何となく興味を引かれた俺は、歩くペースを落としてその前を通りかかる。
チラリと見たポップには、『一口飲めば若返り!誰でも十歳は若くなる、魔法の健康ジュース』などと、アホくさい煽り文句が書かれていた。
「あははー、健康ジュースね」
特に面白いものではなかったな、と思いながら、その前を通り過ぎようとした。
そのとき。
「あっ、お兄さん、どう?一杯いかが」
ニコッと可愛らしい笑顔のお姉さんに呼び止められ、何となく足が止まってしまった。
「本日、こちら、試飲できます」
どうぞ、と差し出された紙コップを、反射的に受け取ってしまう。
「甘いフルーツフレーバーになっていますよ」
ニコリ。
可愛らしい笑顔に唆されて、俺は何となく手の中のコップに口をつけた。
「っー!伏野さんっ、待った…っ」
いきなりビュンと近づいてきた浜崎が、バッと俺から紙コップを引ったくる。
驚いた俺は目を白黒させ、すでに口に含んでいた一口をゴクンと飲み下した。
「っ、あぁぁぁ…」
アチャー、と頭を抱えた浜崎が、ヨロヨロとよろめく。
「あの…」
一体何なのか分からずに、何やら絶望している浜崎を見る。
「あぁマズい、オレ死んだ…」
ジャーッと失礼にも、残りのジュースを売り子のお姉さんの前で地面に零しながら、浜崎が天を仰いでいた。
「浜崎さん?」
何してるの、この人…。
「はぁぁっ、伏野さぁん…」
「な、何」
気持ち悪い…。
「頼んますよー。素性の知れない相手から出された飲み物を、むやみやたらに口にしないでくださいー」
うわーん、と半泣きになりながら、浜崎がクシャリと顔を歪めている。
「素性のって…」
「あぁぁぁ、オレ、これ報告したら、もう絶対仕置きだ。ボコられる…」
今度はガクッと地を見た浜崎の哀愁っぷりが半端ない。
「あの…?」
「万が一、その売り子が伏野さんを狙う刺客とも限らないんすよ?そんな女に出された飲み物を、阻止できずに口にさせたなんて知れたら…」
半殺しで済むかな…なんて落ち込んでいる浜崎の言葉が、どれも怖すぎた。
「っ、俺を狙うって…」
ゾッとなりながら浜崎を見たら、しまった、という顔をして目を逸らす。
「浜崎さん?」
「いや、例えば!例えばですよ?今、揉めているとか、狙われているとか、そういうんじゃなくて…」
「はぁ」
「ただ、万が一っす。会長の身辺は、隙あらば、みたいな輩がいないとも限らなくて…。だから常日頃から、一応の警戒はしておかないと、っていうか、そのためにオレとかが、外出に同行しているっていうか…」
あぁそうか。
俺は蒼羽会会長、火宮刃の本命だった。
「あの、すみません…」
呑気な一般人感覚で。
「っ、いえ!伏野さんは悪くない…悪くないっすけど…」
「あの…半殺しって」
怖い台詞の2つ目を、恐る恐る口にすれば、浜崎は痛々しい笑みをそっと浮かべた。
「仕方ないっす!オレがそのために同行しているのにもかかわらず、阻止できなかったんすから!もし本当にコレが毒や睡眠薬で、伏野さんに何かあったら、それこそ」
「っ…」
だけどそれは、俺の無自覚と立場の認識の甘さが招いたことでもあって。
「浜崎さんっ!」
「な、なんすか?」
「報告…しなくていいですよ!だってほら、俺はピンピンしてますし!どこも変な様子はないですし!ねっ?今回はこのこと、黙っておきましょう!俺も絶対漏らさないので!」
うん、それがいい。
ちょっと健康ジュースの試飲を口にしちゃったくらいで、何が起きたわけでもないのに。浜崎を辛い目に遭わせたくない。
「でも…」
「大丈夫ですって。健康ジュースですよ?健康にこそなれ、身体を悪くすることなんて」
ないない、とわざと明るく笑顔を向ける。
「はぁ…。でもっ、万が一遅効性の何かだった場合…ちょっとでもおかしかったら、すぐに会長に言って下さい!絶対に!オレを庇うことなんか考えないで、絶対言ってくださいね!お願いっす!」
「あは、うん」
でもそれは、よっぽどなときだ。
「約束っす」
「わかった、わかりましたから」
信用ないなー。
「ありがとうございます」
「いーえ。半分は俺のためでもありますから」
これで浜崎が仕置きを受けようものなら、俺だって責任を感じずにはいられないし。
「本当にありがとうございます」
「だから、いいですって。それより、一口で十歳近く若返るって」
ププッ、と笑いながら、宣伝文句を茶化す。
「10歳の子が飲んだら、0歳並みになっちゃうんですよ?それ以下なら、存在前って、笑えすぎ」
ないないー、と笑う俺に、浜崎もようやくへラリと笑顔を見せた。
「そうっすね。本当に若返ったら、消滅すんのか、って話っすよね」
「ねー。見た目年齢の話なんだろうけど、もっとマシな文句つければいいのにー」
こんなアホくさいものに、何の危険もあるわけない、と。
俺は浜崎に言い聞かせるつもりで、軽口を叩いていた。
けれどこれが、全ての間違いで、全ての始まりだった。
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