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弔いの花が散る1
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【本編183話、執筆後】
火宮が高校生のときの物語。
シリアスです。ダークです。
救いはありません。
誰も報われません(汗)
大丈夫な方のみスクロールどうぞ。
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ピィーッ。
校庭に、甲高い笛の音が鳴り響いた。
聖は、生徒会室からぼんやりと窓の外を眺めながら、クスッと小さな笑みをこぼした。
「天束?」
「ふふ、珍しい〜。刃が体育出てる」
クスクスと揶揄うような笑い声が、生徒会室の空気を震わせる。
「ジン?あぁ、火宮刃か」
はっ、と不快そうにその名を吐き出しながら、生徒会長、藤城瑛(ふじしろ えい)が、トントンと資料の端を揃えている。
「ふふ、体操服とか、似合わない」
窓枠に腕を掛け、顎を乗せて校庭を眺める聖が無邪気に笑う。
「最近、仲が良いらしいな」
「んー?僕と刃?そうかなぁ」
「何だかんだとつるんでいるだろう?」
「まぁね。友達になったし」
ゆっくりと室内を振り返って、聖が薄っすらと目を細めた。
「友達って…何であんなやつと」
「クスクス、あんなやつ?」
「不良だろう?」
「まぁ、先生やみんなはそう言うよね」
ふふ、と笑う聖の目は、またゆっくりと窓の外に戻って行く。
「まっ、藤城会長殿から見たら確かに刃は不良だね。何せ、藤城会長はせっかくの自習時間に、こうして生徒会のお仕事をしちゃうくらいだもん」
まっじめ〜、と揶揄うように笑う聖に、藤城の顔がムッとなる。
「そういう話で、教室を出るのを許してもらったんだろう?」
「クスクス、そんなの建前で、本音はクラスメイトや代理の教師の監視がない場所で、正々堂々とサボるためでしょ?」
どこまでも無邪気に笑いながら、聖はコテンと頭を腕の上に寝かせた。
「ったく、おまえも、生徒会副会長で、十分優等生の部類だろう?」
「ふふ、僕が?」
「本性は別として、教師も一般生徒もみんなそう思っている。だから、火宮と天束がつるんでいるのを、心配する声も上がっているんだぞ」
パサッ、と整った資料を机の上に置いて、藤城がキシリと椅子から立ち上がった。
「心配ねぇ…」
「俺もだ、天束。悪いことは言わない。あいつは、やめておけ」
スッと窓際の聖の背後に立ち、ギリッと憎しみとも取れそうな鋭い視線を、藤城は外の火宮に向ける。
「あはは。僕が誰とどう付き合おうと、僕の自由だよ」
「っ、それでも。火宮刃だけは駄目だ」
ガシッと聖の肩を掴んだ藤城の手を、聖はやんわりと包み込み、ゆっくりと撫でて離させた。
「瑛。心は誰にも縛れないよ」
「っ、天束…」
ギュッと握り締められた藤城の拳が震えた。
食いしばった歯の奥から、堪え切れない悔しさが滲み出ている。
「あっ、見て。刃の番だ」
窓の外ではどうやら、火宮のクラスが体育で短距離走をしているようで。
火宮の順番が来たと、聖が無邪気に笑う。
「うわぁ、綺麗なフォーム。速い!」
「ふん。俺もあれくらい…」
「やっぱり格好いいなぁ。勉強も出来て、運動も出来て、あのスタイルにあの容姿」
ほわぁ、と頬を緩めながら、聖がうっとりと呟く。
「だが喧嘩上等、サボり魔の不良だ」
「ふふ、まぁねぇ…クスクス。言っている側から、見て、もうサボるみたい」
聖が視線を投げた校庭では、走り終わった火宮が、みんなの列には戻らず、スタスタと校舎の方へ歩いて行くのが見えていた。
「ふふ、刃だよね〜。僕、ちょっと行って来よっと」
「は?おいっ、天束!まだ授業中…」
パッと立ち上がって窓から離れた聖を止める間もあればこそ。
聖は藤城の制止の声も聞かず、生徒会室を飛び出して行った。
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