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どS三人衆 1
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【本編228話、執筆後】
ともみ様のご感想で、ポロリと「ドS三人衆が集まって会話をしたらどうなるんだろう・・・」と見まして、書きたい!と思って出来たお話です。
どS三人衆が集合したらこうなりました。
時系列は、蒼羽会発足から数年後、火宮と翼は出会う前です。
ただ大人3人がダベっているだけのお話ですが、よろしければどうぞ。
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パラパラと書類を流し見た夏原が、うん、と深く頷いた。
「オーケーです。これで契約書には何の不備もありません」
「そうか」
「後は俺の方で処理しておきます」
「あぁ、頼む」
トントンと端の揃えられた書類が、ストンと封筒の中に落ちる。
「いやぁ、しっかしえげつないですね。この条件で頷かせましたか」
「ふん。おまえも1枚噛んでおいてよく言う」
悪質さに関してはおまえもだ、と頬を持ち上げる火宮に、夏原がケラケラと笑った。
「ま、今回は正規の企業の方でしたが、俺はヤクザのお抱えをやるくらいですからね」
良心なんてどこかに置き忘れました、と平然とのたまう夏原に、弁護士登録を許したのは一体誰なのか。
「ククッ、確かにおまえくらい図太くないと務まらないな」
「お褒めに預かり光栄です」
「これが褒め言葉だと言うんだからさすがだ。それで、追加報酬に金はいらないんだったな。何がいい」
スゥッと目を細める火宮は、すでにその答えは予測済みだ。
それでも問いかけてくるたちの悪さを苦く感じながら、夏原は妖艶に微笑んだ。
「もちろん、真鍋能貴」
悪びれもせずに言い切られるモノに、今度は火宮が苦笑いを浮かべる。
「やっぱり右腕を売れか」
「そんな大それたことは望んでいませんよ。ただ…そうですね、今回の契約成功の祝いに、慰労も兼ねて、食事会あたりはどうですか」
「ククッ、俺をダシにするとは、おまえは」
キラリと光る火宮の鋭い目に、さすがに慣れているはずの夏原も、ギクリとわずかに身を強張らせた。
色々な意味での共犯者だとはいえ、火宮はヤクザの頭であって、夏原はただそのお抱え弁護士。
2人の間にあるものは友情なんかではなく、利益と打算で結ばれた契約関係。
いくら悠然と構えていても、ひとたび火宮の神経を逆撫でしたり、逆鱗に触れようものなら、夏原だってどうなることか、身の保証は一切ないのだ。
それが分かっている夏原は、火宮の一挙一動を、見誤らないように慎重に口を開く。
「だって能貴は、俺1人が誘ったって、絶対に頷いてくれませんから」
「ククッ、だから俺から、仕事だと、命令しろってことか」
「接待なら断れないでしょう?」
「あいつは真面目だからな」
ククッ、と喉を鳴らす火宮の機嫌は悪くない。
「その割には今日も、来ると連絡を入れてもいないのに、何故か早々に逃亡したようですが」
出迎え、案内どころか、幹部室にも事務所の見えるところのどこにも真鍋の姿はなかった。
「ククッ、俺のスケジュール管理は誰がしていると思っている」
「それは能貴でしょうが…ってまさか」
「ふっ、漏らしてはいない。俺はただ、イレギュラーで1件、人と会う約束が入ったから、予定をずらせ、と命じただけだ」
火宮の言葉に、夏原がガックリと項垂れた。
「優秀すぎるのも考えものですよね」
「俺は有能な秘書がいて助かっているぞ」
「それはそうでしょうけれど、内緒でいきなりやって来ても、それだけの情報で察して隠れてしまうなんて」
「ククッ、1つ教えてやる。この俺に事前アポもなく押し掛けて来るようなやつは、切羽詰まって命乞いをしに来た同業者か、オヤジかおまえだけだ」
ふっ、と笑みをこぼす火宮に、夏原の肩はますますガックリと下がった。
「その同業者なら、あなたが予定をずらしてまで会うはずがないし、組長殿なら能貴に名を言うはず、ですか」
「ククッ、おまえも優秀じゃないか」
ニヤリ、と笑う火宮には、やっぱり勝てないな、と夏原は脱力した。
「本当、食えないお人ですね」
「俺を食いたきゃ、腹下しする覚悟で来い」
「クスクス、いえ、遠慮します。俺が食いたいのは、真鍋能貴ただ1人」
「おまえのそれは、食うの意味が違う。真鍋も可哀想に」
悠然と足を組み直して、夏原を流し見る火宮の視線に、その気がなくてもゾクッと震える夏原は、目の前の絶対的王者に畏怖している。
それでも折れないのがこの夏原という男。
「酷いですね。そんな疫病神に取り憑かれたみたいな言い方をしなくても…」
「違うのか?」
ククッ、と愉しげに笑う火宮は、どこまでが本気なのか。
「俺は能貴に、厄災ではなく、幸福をもたらすんです」
「真鍋にとったらどうだかな。まぁ、あれは難攻不落だ。せいぜい頑張れ」
ふっ、と目元を緩めた火宮が、ポケットからスマホを取り出す。
ワンコールもしないうちに始まる通話に、夏原が悔しそうに天井を仰ぐ。
「俺だ。今夜、接待を1件。適当な店を押さえておけ。…あぁ、弁護士先生と俺とおまえだ…ククッ、今回の大口契約成立の祝賀会だとさ。そうだ。…あぁ」
ふっ、と笑ってスマホをしまった火宮に、夏原が頭を下げる。
「ありがとうございます」
「真鍋のあの嫌そうな声。レアで笑える」
「本人にそういうこと、言いますかね」
「おまえが今更」
嫌がられているのが通常なんだから、気にするわけがないと火宮は言う。
「ま、嫌よ嫌も好きのうちですかね」
「その前向きさには呆れるな」
「クスクス、いつか必ず落としてみせますから」
「ククッ。とりあえず、場所と時間が決まったら連絡させる」
「お待ちしております」
ゆらりと立ち上がり、優雅にお辞儀をした夏原の背で、サラリと長い髪が揺れた。
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