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どS三人衆 2
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「ふふ、ねぇこれ、能貴も好きだろう?」
ニコニコと、どこまでもご機嫌の夏原と。
「会長、こちらのおすすめは、この料理になります」
機嫌がいいのか悪いのか、淡々として無表情の真鍋は、夏原を軽く無視して火宮にメニューを示している。
「ククッ、おまえの舌は確かだからな。おまえが選ぶなら悪くないだろう。注文は任せる。酒は…」
真鍋に役目を与えつつ、2人の様子を面白おかしく傍観している火宮という、なんとも言えない面子での食事会が始まった。
「はい、能貴、グラス…」
「会長、お注ぎいたします」
ボトルを手に取ろうとした夏原の横から、素早くそれを奪い取った真鍋が火宮に向き直る。
「ククッ、あぁ」
ニヤリと唇を吊り上げてグラスを差し出す火宮は、宙に浮いて無意味にグーパーする夏原の手を、チラリと嫌味ったらしく流し見る。
「ねぇこれ、俺の接待だよね?能貴、今回の契約成立に関して、俺、すっごく頑張ったんだけど」
ですよね?と火宮を見る夏原に、火宮はシラッとそっぽを向く。
「顧問弁護士として当たり前です」
むしろ手抜きをしようものなら許さない、と冷たい目をする真鍋は、火宮の利益になることだけが絶対だ。
「うっ、でもさ」
「まぁ少しはご活躍なさったようですので、お酌くらいはさせていただきます」
ほら、とボトルを揺らす真鍋に、夏原が嬉しそうに目を輝かせた。
「って、何これ。泡ばっか。さすが、能貴だよね」
わざとグラスの半分以上が泡になるように注がれたビールに、夏原が乾いた笑い声をもらした。
「あぁ、お酌が下手で、大変失礼いたしました」
ニコリと口元しか笑っていない真鍋の笑みが炸裂する。
その斜め向かいには、綺麗なバランスで注がれた、火宮のグラスが琥珀色に輝いていた。
「ちょっとー、会長。右腕とも呼ばれる秘書さんに、どういう教育なされているんですかー」
ジトーッと胡乱な目を火宮に向ける夏原に、割って入ったのは真鍋で。
「ご安心下さい。他のお得意様や取引先相手には、このような真似は致しませんので」
「えっ、じゃぁ俺って特別?」
パッと無邪気そうに目を輝かせる夏原に、真鍋がげっそりと溜息をついた。
「クックックッ、ポジティブ思考もここまでくると一種の才能だな」
「ご冗談を。これはただの会話が成立しない馬鹿です」
情け容赦ない真鍋の発言に、火宮が愉快そうに喉を鳴らし、夏原がゾクゾクと身を震わせていた。
「あぁたまらない、その冷酷さ。身を焦がすような恋情と欲情にまみれさせて、俺の足元に跪かせたい」
「……馬鹿の上に変態がつくのでもう手に負えません」
ペロリと舌舐めずりする夏原を冷ややかに見遣って、真鍋はシラッと火宮に料理を取り分けている。
「ククッ、おまえの趣味がさっぱり理解できん」
「あー、まぁ会長は、可愛くてちょっと反抗的だけど自分に尽くすようなどMが好みですもんね」
「ククッ、真鍋だって、苦痛に泣いて悶えながらも、健気に慕ってくるMが好きだったろう?」
「そうですね」
暗にあなたは範疇外、と冷ややかに視線を流す真鍋を、夏原はそれでも楽しそうに見返す。
「俺も本来、苛めても苛めてもキャンキャン懐いて纏わり付いてくる、可愛い犬っころが好きですよ?」
「ほぉ?それにしたら随分な宗旨替えじゃないか?」
チラッと真鍋を見る火宮の視線を、真鍋は嫌そうに跳ね返す。
「そもそも男の私に目をつける時点で、頭でもおかしくなったんじゃないですか」
「クスクス、それは俺もびっくりだけどね。能貴は、そんじょそこらの女よりずっと綺麗だから」
「………」
呆れ果てて黙り込んだ真鍋を、火宮が珍しいものを見るような目で見つめる。
「ククッ、さすがの真鍋も夏原の口説き文句には手も足も出ないか」
「いえ。ここまで会話が成立しない相手と話すのが、もう無駄にしか思えませんので」
どうぞ、と、空になった火宮のグラスに酒を注ぎながら、真鍋はさっさと夏原を眼中から消している。
「本当、そのクールなところが堪らない。その冷たい顔をトロ顔に溶かす相手は俺だからね」
「会長、妄想癖まであるこの男、このままうちの顧問に置いておいてよろしいのですか?」
バッサリと、切り捨ててしまえと進言する真鍋に、夏原はチラリと火宮の反応を伺い、火宮は愉快そうに顔を崩した。
「仕事上は申しぶんない」
「まぁ仕事上『は』確かに優秀ですが」
明らかに悪意のある2人の言葉に、夏原が、「はっ」とあらぬ方向を見て息を吐いた。
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