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どS三人衆 3
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「プライベートはまるで違うみたいなその言い方」
「あなたから弁護士資格を取ったら、ただの変態しか残りません」
「うーん、痺れるね。そういう能貴は、仕事を取ったら」
「うっわ、ただのいい男になる」と呟いた夏原に、さすがの真鍋がガチャンッとグラスを乱暴にテーブルに落とした。
「ククッ、確かに真鍋からヤクザを取ったらな。今でだって十分モテる」
「会長っ!」
「先日のNLコーポレーションの取り締まり役の令嬢。あれはどうなった?」
ニヤリと悪い笑みを浮かべて、わざわざ夏原を煽るような話を始める火宮を、恨みがましそうに真鍋が見遣る。
「ん?」
「はぁっ。どうもこうも、あまりにしつこいので1度寝て、お引き取りいただきましたが」
「ククッ、本性で抱いたのか」
「あっさりお諦め下さいましたよ」
シラッ、サラッと交わされる会話だが、その中身はとんでもない。
「能貴、浮気?」
「誰が誰にです。妄想も、そこまで行くと病気ですよ」
医者を紹介しましょうか、と微笑む真鍋の、目だけが笑っていない。
「本当、辛辣だね」
「そういうあなた方も、私の耳に届いていないとお思いですか?」
「真鍋?」「能貴?」と、顔色を悪くする会長様と弁護士様。
「先日店を構えましたあのホステスのところの見習い…」
「あぁ、善がり狂わせて潰したやつか」
「見込みがあったのに、と嘆いておられましたよ」
「ククッ、あまりにいい反応をするものでな」
悪びれない火宮に、真鍋は攻撃の対象を変える。
「夏原先生も。依頼人の奥様」
「あー、あれ?危うくこっちが訴えられちゃうところだった。裁判になって自分の弁護することになったら笑っちゃうよね」
「笑い事ですか」
「だって遊びだろう?あんなの」
に、ぃっ、と笑う夏原に、真鍋が絶対零度を通り越した冷たい目を向ける。
「ククッ、なんの火遊びをしたんだ?」
またも煽る火宮は、完全にこの話の流れを楽しみ始めている。
「ちょっとつまみ食いですよ。本当、どMでしてね、プレイを楽しんでみたいというから、縛り上げて鞭打ってやったんですけど、これがハマるのなんのって」
「おまえは苦痛系を好んだか」
「どっちも好きですね。快楽地獄に叩き落として壊してやるのもいい」
悪い笑みを浮かべてのたまう夏原に、動揺1つ見せずに淡々と話を聞ける真鍋と、むしろ愉しげに先を煽る火宮は同類だ。
「真鍋は苦痛専門だもんな」
「それが快楽になるように調教するのが面白いのでしょう?」
「どMじゃなけりゃ、ついていけないわけだ。ご令嬢には到底無理な話だ」
「それでもいいと縋り付いてきたくせに、実際は口ほどにもない」
ひやり、と物理的に冷気さえも感じそうな、真鍋の冷たい笑顔が艶やかに花開く。
「あぁ、その笑顔、俺の前でぐちゃぐちゃに泣き顔に歪ませたい」
「むしろあなたの方が、私の足元にひれ伏しますか」
「えっ!あー?でもそれも…いや、でもやっぱりいくら能貴でも…」
うーんと首を傾げる夏原の肩から、サラリと長い髪が背中に落ちる。
「……本気で悩まないで下さい」
「クスクス、なんてね。俺はソッチじゃないんだよね」
「それを言うなら私もです」
「うん、だからこんなに夢中なんだよね。ねぇ能貴、俺と付き合おうよ」
「お断りします」
見事な即答と鮮やかな笑顔。
「通算183回目」
「いい加減に諦めたらいかがです?」
「や、だ、ね」
にぱっ、と笑う夏原に、げっそりと視線を逸らす真鍋を、火宮が愉しげに眺めていた。
「ねぇ、能貴。会長を見送ったら、どこかのバーででも飲み直さない?」
「しません」
「つれないなぁ。じゃぁ会長、これから今度はバーに…」
「ふっ、俺はいい」
こちらもつれない火宮の返答に、夏原がつまらなそうに口を尖らせる。
「ちぇー。振られんぼだ」
「ククッ、おまえも女のところにでもしけ込め」
「会長も?」
「あぁ。真鍋。あの、クラブの、なんだったか…」
「ミサですか」
「あぁそれだ。そいつにホテルまで来いと連絡しておけ」
シラッと命じる火宮のそれは、いわゆるセフレというような一時凌ぎの女の1人だ。
「ご盛んですね」
「ふっ、おまえもセフレの1人や2人、ストックしてあるだろう?」
「えー、俺、能貴ひと筋ですよ」
「よく言う」
はっ、と笑う火宮の横で、車の手配と女への連絡を済ませた真鍋が、それはそれは冷たい笑顔で振り返った。
「地獄で舌でも抜かれてらっしゃい」
「なんで2人とも嘘だと決めつけるかな」
「嘘じゃないのか」
「嘘ですけど」
「「………」」
蒼羽会幹部とその頭を同時に黙らせる夏原は何者か。
「会長、この異星人はごみ箱に捨てておきますので、どうぞお気になさらずお帰り下さい」
「ふっ、異星人か」
何故か愉しげに瞳を緩ませた火宮が、1人先に迎えの車に乗り込んでいく。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
深々と頭を下げる真鍋と、優雅にお辞儀をする夏原に見送られ、火宮は後部座席のシートにドサリと身を預けた。
「本気で言ったくせに、あぁもサラリと嘘だと言い切るあれは…確かに理解しがたい異星人だな」
何故わざわざあそこで本音を隠すのか。
「照れじゃなければ…」
それほど真鍋に本気の証拠か。
「あ、あのっ、な、何か…」
思わず漏れた火宮の独り言に、運転手がドギマギと焦っている。
「ふん。運転に集中していろ。こっちの話だ」
「は、は、は、はいっ」
ドカッと蹴られる座席のシートに、車の軌道が一瞬ブレる。
「ねぇ、能貴。一軒だけ」
「行きません」
「一杯だけ!」
「飲みません」
「じゃぁうち来る?」
「………お疲れ様でした」
肩を組んで来ようとする夏原の手を華麗に躱して、真鍋が綺麗なお辞儀をする。
そのまますぐにやってきたタクシーに向かって、夏原を悠然と促す。
「本当、お見事」
すぐ後ろには、真鍋は真鍋で呼びつけた迎えの車が来ているのが見えて、夏原は渋々、用意されたタクシーに乗り込む。
「本当、燃えるよね。おやすみ」
嫌な台詞を残して、夏原を乗せたタクシーは走り去って行った。
「そのまま燃え尽きて灰になりなさい」
「えっ?真鍋幹部、何か」
「いや。こちらの話だ」
ふっ、と小さく吐息を漏らした真鍋を見て、迎えに来た構成員が、目を剥いていたとかいなかったとか。
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