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火宮様のご乱心?
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【本編256話、執筆後】
@nz様のご感想で、「火宮さんをいつも無意識で煽りまくっている翼…火宮さんがどう思っているかはあまり明かされてませんが〜」と見まして、じゃぁ書いちゃおう♡と思って出来たお話です。
火宮視点、裏256話となっております。
中身は…どSズが会話をしているだけの話で、火宮がノロケているだけの話ですが。
よろしければお楽しみ下さい。
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「失礼いたします。ただいま戻りました」
スッと音もなく会長室に入ってきたのは、相変わらず無表情で何を考えているのか分からない俺の片腕だ。
「あぁ、ご苦労。翼はちゃんと遅刻せずに行ったか?」
俺が出たときは、まだベッドの中で、ダルイだ眠いだとグズグズ言っていたが。
「はい。お時間ギリギリでしたが」
「遅刻しなけりゃいいさ」
「そうですね」
チラッと意味ありげに向けてきたその視線は何だ?
真鍋がこうして物言いたげにしているときは、大概が小言だ。
「ふん」
言いたきゃ言え、と視線を返してやれば、無表情な顔が綺麗に笑み崩れる。
ただしその目はまったく笑っていないのだから、本当に器用なものだ。
「それでは申し上げますが、会長。翼さんを平日遅くまでお抱きになられるのはいかがなものかと思います」
そしてやっぱり小言ときた。
見事に予想を裏切らないやつだ。
「会長?」
「あいつが誘うのが悪い」
「……何を大人気ない責任転嫁をなさっているのですか」
はぁっ、とわざとらしく溜息をつくところがこの片腕の嫌味なところだ。
ようやく表情が崩れたと思ったら、それが呆れた顔ってのが腹立たしい。
「ふん。あの照れ臭そうな顔で、艶めかしい赤い舌を出しながら、好きです、なんて言われてみろ」
「………」
「ふっ」
「あなたのなけなしの理性が崩壊なされるわけですか」
思わず思い出し笑いをした俺に向く、それはそれは冷たい視線。
「どうせあかんべーでしょう?」と呆れ果てた色を含むそれが、けれどもゆっくりと真剣な目に変わる。
「ですが確かに、ここ最近の翼さんの色気といいましたら…」
「危ういだろう?」
「あなたが散々お抱きになり、お身体を開発なされたせいでしょう?」
「まぁな。男の味を覚えこませたせいだな。時折俺ですらハッとするような妖艶な色香を立ちのぼらせることがある。あれは堪らん」
ククッと思わず笑みが零れる。
俺以外に向けたら、殺してやろうと思うほどの、たまらなくあでやかな色香を纏う翼を思い出し、ズクンと欲が湧く。
「はぁっ、本当に。あなたに抱かれた翌日の、気だるい雰囲気などは特に。そのフェロモン垂れ流し状態で、そのことに自覚をなされていないことが、大問題ですよ」
「ククッ、だから隙を作らせないために、予防策はしておいただろう?」
下手に制服を着崩して、さらに色香を撒き散らそうものなら、気が気じゃなくて仕事が手に付かない。
「あれですか…」
「ククッ」
「翼さんは、会長のキスマークにお気づきになられて、大変憤っておりました」
「ククッ、目に浮かぶ。どうせまたバカ火宮とでも喚いていただろう」
翼の照れながら怒る顔を想像するだけで、愉しくてたまらなくなってくる。
「よくお分りで」と目を細める真鍋の口元には、確かな笑みが浮かんでいた。
「おまえがそんな柔らかい表情をするとはな」
「っ、それは」
戸惑ったように一瞬で消えてしまうその微笑みが惜しい。
だが恥じたように目を逸らす真鍋の姿は貴重で、いいものが見れた。
「ふっ、さすが翼だ」
「………」
「だが真鍋、まさかおまえまで、翼の色香に惑わされたわけではあるまい?」
「は?」
「あの色気に当てられたからと、万が一、手でも出してみろ?」
真鍋だろうと容赦はしない。
目を細めて睨みつけてやれば、今日1番の冷め切った目で睨み返された。
「惚気ている暇があったら、さっさとそちらに積み上がった書類を処理なされて下さい」
「ククッ、話を逸らすところが怪しいな」
「はぁっ。いつからそんなに痴れ者になられました」
「クッ、相変わらず切れ味抜群だ」
まったく、辛辣な台詞を吐かせたら、真鍋の右に出る者はいない。
「さすがは俺の右腕で、裏ボスだ」
「誰がですか…」
馬鹿を言っていないで、と仕事をさせようとしてくる真鍋は相変わらず真面目だな。
「まぁサボりついでに聞け。実はこの間な…」
帰宅したら、翼が何やらリビングの床に這いつくばって、何かを探すようなそぶりをしていた。
コンタクトでもないはずの翼が何を、と思って尋ねれば、どうやらシャープペンの芯をばら撒いたらしく、必死でそれを拾い集めているところだったそうだ。
「それが何か…」
「ククッ、テーブルの向こうでチラチラと揺れる尻がな」
「………」
「こう、絶妙なカーブを描く可愛い尻が、翼の動きにつられてフリフリと振られ、ズボンの上からでも十分に艶かしくてな」
「はぁっ…」
「誘っているとしか思えないだろう?」
ニヤリと浮かんだ笑みは自覚していた。
真鍋が「そう思うのはあなただけです」と呆れたように呟いた声は聞こえていた。
「確かに思わず近づいてその尻を撫でたら、翼も怒っていたが」
「当たり前でしょう」
「その睨んできた目がまた、困ったように潤んで、目の端は上気して、色っぽくてな」
「はぁぁっ。それで?」
聞きたくないけど聞いてあげます、と言わんばかりの真鍋の目に、俺はニヤリと片頬を吊り上げた。
「もちろんハメたに決まってる」
に、いっ、と完全に笑みを作って、下品なジェスチャーをしてやれば、真鍋のものすごく嫌そうな顔が向いた。
「翼さんもご災難で」
「クッ、嫌がっていたのは最初だけで、すぐに蕩けて乗り気になったぞ」
「すっかり調教済みというわけですか」
「あの色香といったらな」
まさかこの俺が、ガッついて止まらなくなるなんて。
きっと翼以上に、俺自身が驚きだ。
「先ほどのお言葉ではありませんが、あなたがそのように余裕をなくされる翼さんというのは」
「最強だろう?」
翼にだけは、負けても構わないと思うのだから、惚れた弱みとはこのことか。
無邪気に笑う顔も、俺を恐れず真っ直ぐに見返してくる目も。
好き嫌いをして食べ物を仇のように睨む顔も、美味しいものを満面の笑みで食べる顔も。
悪さをして、ギクッと強張る表情も、抱かれて蕩ける甘い顔も。
快楽に泣く姿も、悦びに微笑む姿も。
「すべて好きで、全部たまらない」
「会長…」
「あれは、俺を骨抜きにするために寄越された、天から堕ちた悪魔だ」
羽をもがれてこの手の中に堕ちてきた飛べない翼。
「あなたにそこまで仰らせる翼さんは、本当に」
「ククッ、淫靡で美しい、唯一絶対の俺の宝」
「心してお守りしませんと」と、真鍋が覚悟を新たにしたのを感じた。
「まぁでも確かに、真鍋の忠告も一理あるな」
「会長?」
「高校生など、性欲が野獣だ。そんな中にあの色香を放ちまくる翼を投入するのは、餌をくれてやるようなものだな」
「そうですよ」
「ククッ、慣れている浜崎ですら、時々慌てて目を逸らしている」
「お気づきでしたか」
「あれは俺を決して裏切らない忠誠心があるから心配はしていないが…学校の人間は分からんな」
うっかり翼が襲われでもしたら、俺の心はまた闇に堕ちる。
やはり俺を惑わす悪魔だ、と思う。
けれどそれがたまらなく心地よくて。
「失わないために、平日の情事は加減するか」
「なさらない、という選択肢はないのですね」
「恋人を目の前に、しかもあの俺色に染まったエロい身体を前に、俺に禁欲しろと?」
「翼さんの御身のために」
「はっ、俺の身が死ぬ」
欲求不満でな、と笑ってやれば、真鍋の呆れ過ぎて一周した無表情が向いた。
まったくこいつは俺であろうと容赦ない。
「そういえば、あと1分ほどで、夏原がここに来るな」
「は?本日のスケジュールに、そのような予定は…」
少し苛めてやるか、とわざとギリギリで伝えた情報に、無表情の真鍋の顔から血の気だけが引いていく。
「ククッ、おまえがここに来る一瞬前に電話が終わった」
「っ、秘書室を通さずにあなたの番号に直接?」
「いつものことだろう?」
「それであなたはダラダラと雑談で私を引き止め…」
いやそれは、単に翼自慢だがな。
「っ、私はこれで失礼しま…」
ククッ、もう遅い。
たった今響いたノックの音は、夏原を連れてきた池田のものだろう。
「クッ、俺の惚気を聞いてくれる礼に、いつかおまえの惚気も聞いてやる」
「相手は夏原先生、などと抜かしたら、あなたでも容赦しませんよ」
ギロッと向けられる視線は、さすが蒼羽会幹部。
だが…。
「んー?俺が何?あ、会長、失礼しまーす」
「あぁ、入れ」
「え!嘘!能貴がいる!」
出迎えが池田だから期待してなかったのにー!と輝く夏原の目に、いつにも増した無表情を纏う真鍋が面白い。
「覚えておいて下さいよ、会長」
「ククッ、一瞬前まで俺を睨んでいた顔が。クックックッ」
「どうしたんですか?会長?能貴?」
「夏原、今度奢れ」
「はい?」
わけが分からず貸しを押し付けられたとしか思っていないだろう。
だけど、チラッと真鍋に視線を流せば、夏原は納得したように理解した。
だからこの男もいい。
「さて、仕事をするか」
今頃翼は授業を真面目に受けている頃か、と思いながら、夏原との面談で必要な書類を引っ張り出す。
「今夜が楽しみだな」
今日はどんな学校での話を聞かせてくれるだろうか。
友達はできただろうか。
授業は問題なくついていけているか。
翼が表情豊かに話してくれる土産話を楽しみに、今日も精力的に仕事に取り組める気がした。
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