アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
リクエスト⑤ 風邪4
-
結局俺が注射をどこに打たれたかって?
それは、いつの間にか運ばれたらしいマンションの寝室で目覚めたときに、ペタンと四角い小さな絆創膏が貼られていたのは、無事に腕の内側でしたよ。
脅しでよかった、と思うけど、そういえばそれで気を失ってしまったおかげで、注射の痛みを知らずに済んだ。
「まさか計算?…なわけないか」
あのサディスティックな笑みは本物だった。
「翼?目が覚めたか?」
「あ、火宮さん…」
仕事は?
手にトレイを持った火宮が、リビングに続くドアから入ってきた。
「クックックッ、腕でよかったって?」
あ、腕の絆創膏を眺めていたのに気づかれた。
「栄養剤は静脈注射だ。尻に打つわけがないだろう」
「はっ?」
筋肉注射じゃあるまいし、って、え?
「ほら粥だ」
「え?」
待って、今この人、何を言ったの?
「浜崎に作らせた」
まぁ火宮が料理なんてするわけないけど、っていやその前に。
「食えるか?」
「えっと…?」
まぁ、ちょっと小腹が空いた気はする。
けど待て、その前に。
やっぱり熱が高いのか、いまいち思考が上手くまとまらない。
「熱はどうだ。高くて辛ければ、解熱剤を入れてやる」
ほら測れ、って体温計を渡される。
それでニヤリと悪い笑みを浮かべいるその顔は。
「あ、入れるって…」
普通、薬は飲むって言わない?
そういえば火宮は医者に、解熱剤は座薬でどうとか言っていたような…。
「まさか…」
腋に入れていた体温計が、ピピッと音を立てる。
取り出したそこに見えた数字は…。
「何度だ?」
「っ…」
火宮に見せるわけにはいかない。
「ろっ、6度!6度2分ですっ!」
やばい。
本当は40度2分だなんて。
言えない。言ったら何をされるかなんて明白だ。
「ほぉ?おまえの目には、これが6度2分に見えるのか」
重症だな、と唇の端を吊り上げる火宮の手には、いつの間に奪われた!体温計があって。
「ひっ…」
「幻覚が見えるほど悪化しているようじゃぁ、解熱してやらないとな」
ほら尻を出して割れ目を広げろって?
「嫌ぁーっ」
「性懲りもなく嘘をついた罰に、解熱剤のついでにローターも入れてやるか」
汗をかけば熱も早く下がるぞ、って…。
「俺っ、病人ですからっ!」
もうこの人、何を考えているの。
火宮に看病されると、まったく治る気がしないのはなんなんだ。
「ククッ、なんてな。しないよ。ったく、仕置きは風邪が治ってからたっぷりとしてやるからな」
「っ…」
それは助かったんだか、新たな脅威が生まれたんだか。
「今はしっかりと身体を休めて、早く元気になれ」
けれどそっと頭を撫でてきた火宮の手には、優しく温かい愛情が溢れていて。
俺を見つめる火宮の目は、どこか少し辛そうに、俺の病気をいたむように心配そうに細められていた。
「どっちが本物ですか…」
思わず呟いてしまった言葉の答えを、俺は本当は知っていた。
どちらも火宮。
意地悪でどSで苛めっ子なのも。
本当は優しくて俺を愛してて俺の病気に心を傷めているのも。
「代わってやれればな…」
ポツリと呟かれた火宮の本音に、「あぁ、一刻も早く元気にならなきゃな」と、何より効き目のある特効薬が心に広がった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 233