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恋人はどS様 おまけ
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「………」
「何か」
「………」
「……だから、なんなんですか、一体。翼さん?」
火宮の迎えにと、玄関先にやって来ていた真鍋を、俺は壁に隠れて目から上だけを覗かせて、チラリと見ていた。
火宮はちょうど海外のビジネス相手から電話が入ってしまい、自室に入って話をしているところだ。
それを伝えて待たせておけという火宮のお使いで、玄関まで出てきたはいいものの、その真鍋に近づきたくない。
「翼さん?」
いい加減に、真鍋の表情が怪訝なものに変わる。
まぁ、挙動不審な自覚はあるけど、やっぱり側に寄りたくない。
「鬼。悪魔。どS」
「なんの話ですか」
ボソッと呟いてしまった俺に、話が見えない、と真鍋が呆れている。
「私は翼さんに何かいたしましたか?」
はぁっ、と溜息をついている真鍋に、俺はこっそりと頷いた。
したした。
それはもう、怖いことをいっぱい。
夢の内容を思い出して、ゾゾッと再び寒気に震えたところで、不意に後ろからパフッと頭に手が乗った。
「わ。火宮さん」
「どうした。こんなところでコソコソして」
なんの遊びだ、と笑う火宮が、電話を終えたらしく、出勤スタイルでいつの間にか隣に立っていた。
「真鍋?」
「いえ。私は何をした覚えもないのですが」
したくせにー。
「翼?」
「え?」
「何をされた」
途端に怖い空気を纏って真鍋をギロッと睨んでいる火宮に、俺は慌てて口を押さえた。
「俺、言いました…?」
「あぁ。ばっちりな」
今度はスゥッと俺に向いた目が、妖しく光る。
「俺の与り知らないところで、2人で何を。浮気か?」
ニヤリと悪い笑みを浮かべた火宮の顔を見て、俺はブンブンと千切れんばかりに首を振った。
「まさか!そんなわけ!ただ俺は夢でっ…」
「夢?」
「そうですよっ。夢で真鍋さんが恋人でっ…怒ってて…」
「真鍋と恋人?」
ズシン、と一段火宮の声が低くなり、俺はまたもハッと失言に気づいた。
「あ、や、だから、違っ、それはっ…」
夢だから!
しかもめちゃくちゃ怒られただけだから。
「それは願望か」
「はぁっ?そんなわけないですっ」
あんな恐ろしい人と。
「真鍋と恋人同士など、夢でも許せん」
ジロッ、ギロッと、火宮が俺と真鍋を順番に睨む。
「これは翼、おまえの恋人が一体誰なのか、しっかりその身体と記憶に刻み込む必要があるようだな」
「っ!」
「たとえ夢の中でも、おまえの恋人は俺、ただ1人だ」
「っ…」
飲んだ息がヒュッと喉に絡まり、そのあとジワジワと身体の全身に広がっていくこの甘い痺れは…。
「翼、仕置きだ」
あぁ強い、強すぎる独占欲。
だけどそれがまるで麻薬のように、頭の芯までジワリと痺れさせてしまう。
「たっぷり啼かせて、思い知らせてやる」
「っ!」
って、ボーッと放心している場合じゃない。
「真鍋さ…」
助けて、と伸ばしかけた手は、恐ろしい鬼に向かって何を、と思いとどまってしまった。
「翼?」
「翼さん?」
思わずギュッと火宮のスーツの背中にしがみついてしまった俺に、2人の目が向いた。
「あは…」
やっぱり俺は、こっちがいい。
お仕置き宣言されてたって、この人の方がどうしたっていいんだ。
「ふっ…」
何を察したか、火宮がとても嬉しそうに、柔らかく目を緩ませた。
私が一体何を、と眉を寄せる真鍋から、当分の間、俺が逃げ回っていたのは、蒼羽会内であれこれと憶測が飛び交う有名な話。
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