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リクエスト⑪ 記憶喪失9
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「はぁっ。それでこれ、一体どうするんです」
「ん?まぁ、放っておけば、そのうち起きるだろう」
「それにしたって、いくらなんでも無茶をし過ぎです」
ボソボソと、どこか遠くで、誰かと誰かが言い合っている。
ゆらり、ゆらりと揺蕩う意識の波間で、俺はぼんやりとその声を聞く。
「だってな、翼がまるで初めてみたいな、あまりに新鮮な反応をするから、つい」
「それは、記憶のない翼さんにとって、そういった行為は初めてということになるのですから。いくら身体は慣れているとはいえ、いきなり挿入なさるなど…」
「ふん」
なんだかゴソゴソと、身体を拭われている感触がする。
「はぁっ、もう、こちらもこんなに腫れて、お可哀想に」
「チッ、小舅めが。だから事後処理と手当てくらい、俺が自分でやると…」
「ですから!あなたは、七重組長をお待たせなのですよ?さっさと急を要する書類を仕上げて、お出掛けの準備をなさってください!」
あぁもううるさいなぁ。
俺はまだ眠いんだから。
「だが翼も一緒に食事に連れて行きたいという話なんだから、そいつが目を覚まさないことにはどうしようもないだろう?」
「ですからこちらの処理は同時進行で私が…」
「あぁもうっ、うるさいですっ!」
まだ目覚めたくなかった意識を無理矢理浮上させて、俺はガバッと起き上がった。
「もうっ、火宮さん!真鍋さんっ。朝っぱらから何なんですか。喧嘩なら他所で…」
って、あれ?
え?なんで会長室?
昨日の夜は、確か寝室のベッドで、火宮といたしてそのまま寝たはずで。
「なんでワープしてんの…」
思わずボソッと呟いた俺は、なんだか穴が開きそうなほどこちらを見つめてくる、火宮と真鍋の視線を感じた。
「って、えぇっ?!」
ちょっと待って。俺、なんで下半身がすっぽんぽんなわけ?
「見っ…服っ、ズボンっ…」
半ばパニックになりながら、ワタワタと周囲を見回す。
呆気にとられた珍しい顔をしながら、真鍋がスッ、とズボンと下着を差し出してくれた。
「っ…」
「おい、翼」
引ったくるように下着を取って、急いでそれを履く。
後ろに微妙な違和感があるんだけど、これは昨夜の名残なのか?
「おい翼」
「なんですか!」
俺、今、それどころじゃないんだけど。
なんで真鍋がいる前で、俺は下を履いてないの。
「だから翼。俺は誰だ」
はぁっ?
ようやくなんとかズボンを履き終わったところに、訳のわからない質問が飛んできた。
「何言ってるんですか?火宮さん」
「俺が分かるのか」
「は?」
分かるも何も…。
「火宮さんは火宮さんでしょう?火宮刃。蒼羽会会長で、会社の社長さんで、俺の恋人で家族の」
それとも何か。
そこにいる火宮は偽物だとでも言うのか。
「分かっているな…。ではそいつは」
「は?真鍋さん?」
「フルネームは」
「真鍋能貴さん。蒼羽会幹部で火宮さんの右腕で夏原さんの未来の恋び…って言うのは俺の勘違い、で」
怖っ。
ちょっと冗談を言ってみただけで、そんなに睨まないでよ。
「ククッ、元通りの翼だな。真鍋、オヤジを入れろ」
「かしこまりました」
え?七重さんも来てるの?
「ねぇ火宮さん。俺、なんで会長室にいるんですか?わざわざ寝ている間に、こっそり連れて来たんですか?」
「覚えていないのか」
「え?何をです?」
キョトン、と首を傾げた俺に、火宮の苦笑が向いた。
「いや…」
「………?」
小さく首を振る火宮の目がなんだかやけに穏やかで、理由のわからない俺は、コテンとますます首を傾げるしかなかった。
「おおぉっ、翼くんっ」
な、なんなんだ。
その後、真鍋に連れられ、室内に入ってきた七重に、何故か熱烈歓迎をされ。
どさくさに紛れて抱きついてこようとした七重を火宮が睨みつけ。
「よかった。よかったなぁ、火宮」
「ふっ、別に俺は、記憶のない翼でも」
「おぅおぅ、強がりおって。素直に喜べ」
「お戻りで、なによりです」
なんだかよくわからないんだけど、みんながやけに喜んでいた。
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