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リクエスト15 バレンタインデー 3
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「うっわぁ」
真鍋に案内された、チョコレート専門店は、雑誌でよく取り沙汰されるような、有名なショコラティエがいる高級ショップだった。
「すごい。宝石みたい」
チョコレート1つ1つの値段が、まったく可愛くないウィンドウの中なんだけど、そこに並ぶチョコレートは、煌びやかで可愛くて美味しそうで、思わず唾液が滲んでくる。
「お気に召すものを、ごゆっくりお選び下さい」
側に控えて、邪魔をしないスタンスを取るらしい真鍋に、曖昧に笑ってしまう。
選ぶといってもこのお店、俺のお小遣いではとても何個もというわけにはいかない品ばかりだ。
「うーん」
厳選した3つ、というところかな。
あぁでもせっかくだし、ついでにいつもお世話になっている真鍋さんと、浜崎さん。後は池田さんにも及川さんにも買おうかな。
あれこれとチョコレートを眺めながら、指折り数えていたら、不意に横から真鍋がスッと視界に入ってきた。
「翼さん」
「はい?」
「くれぐれも、会長以外の者にまで、お買い求めになろうとなさらないでください」
「はぃぃ?」
何この人。エスパーなの?
「え。もしかして、真鍋さん、チョコレートは嫌いですか?」
俺が買おうと思った空気を察したとか。
「いいえ」
「じゃぁ…」
「翼さん。あなたは私を、海底の藻屑になさりたいのですか?」
「はぃぃぃ?」
何がどうしてそうなる。
「もしも相手の身の安全を考えて下さるのでしたら、翼さんは会長だけに、特別に、チョコレートをお贈り下さい」
「………」
あぁ。真鍋の言いたいことはなんとなく分かったかも。
「やっぱり義理チョコでもまずいか…」
思わずポツリと呟いた言葉に、真鍋が「当然です」と、呆れた顔で苦笑していた。
そうして、俺は、うんうんと散々悩んだ挙句、ビターな四角いスタイリッシュなチョコレートと、中にお酒が入っているらしいお洒落なチョコレート。
そして1つはオーソドックスに、ハート型の可愛いチョコレートを、火宮のためだけに、選んだ。
それを、綺麗な箱に詰めてもらい、贈り物のラッピングをしてもらう。
店の奥の方では真鍋もなにやら買い求めていたらしく、小さな紙袋を手にしている。
「あっ、それまさか、夏原さんに?」
「は?」
無表情がさらに無表情に凍りついた真鍋の顔が怖い。
「あ、いや、違いますよねー」
あはは。やばい。
地雷踏んだ。
そっと真鍋から目を逸らしながら、そぉっと真鍋から距離を取った。
「ふっ、あなたの呑気さは…」
「え?」
「いえ。もうお済みでしたら、参りましょう」
「あ、はい」
お送りします、と再び車に乗せられた俺は、手の中の小箱を、なんだかほっこりと眺めていた。
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