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古い木造の部屋。昼でも少し薄暗い。六畳ほどの広さで畳も壁も薄汚れている。
だが窓が大きめで風通しだけはよさそうだった。
「今上がって来た階段の裏っかわ、あすこがだいどこですわ。その奥が風呂。
便所はその横にありますさかい。あ。わたしの住まいはここのしも隣、
なんぞぉあったらそこへいうとおくれやす。
お家賃も毎月末に家のほうへ持って来てもうて。」
「あ、あの光熱費は」
「毎月のメーターの頭割りで」
「あ、はい。」
「ほな、私はこれで。なんかわかれへんことがあったら、アパートの人に聞いとおくれやす。」
帰ろうとする管理人を、修平はあわてて呼び止めた。
「あっ、あの!鍵は・・・」
「へ?なんどす?」
「部屋の、鍵・・・。」
管理人はめずらしいものを見るような目で修平を見て少し笑った。
「ああ、皆さんそう言わはりますなあ。ここは部屋には鍵ついてしませんにゃ。」
「えっ」
「まあ、男の子ばっかりやしねぇ。今んとこ、泥棒が入ったちゅう話も
聞かしまへんし。ほな、私はこれで。」
修平はさっさと帰って行く管理人を見送ると、まだ手にさげていたバッグを
床におろした。鍵のついていないドアノブをとくとくと眺め、
「マジか・・・」とつぶやいてそうっとドアを閉めた。
「京都の人の言葉って、なんか猫みたいだな。」
修平の頭のなかで、さっきの老人がにゃあ、と鳴いた。
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