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広瀬がうれしそうに言う。
「オニ君料理もうまいんや。」
鬼塚が机に大皿を置こうと、ちらかった皿やグラスをどけながらふりかえった。
「なに?なんの話?」
「オマエの話。」
「なんでー。」皿を置いて鬼塚があきれたように言った。
「僕の話より、みんな自己紹介したんか?新入生歓迎会やのに!」
軽そうな男がペロリと下を出して剽軽に手をあげた。
「あーそっか。はい。わたくし、田口友夫ともうします。
デザイン学部、商業デザイン科、二回生、です!」
それをきっかけに、鬼塚を中心に輪ができた。鬼塚はその中心の場所を
そっと修平に譲って自分は料理の取り分けにかかりだす。
次々と自己紹介が続くなか、修平はおもわず鬼塚のほうを見てしまっていた。
不思議な魅力を、感じずにはいられなかった。
翌朝。
修平は12号室で目覚めた。
あのあとみんなで散々飲み食いして、そのまま雑魚寝になったようだ。体のあちこちが痛い。
ほかの連中はみなまだよく寝ていたので、そっと起き上がって、転がっている先輩たちを
踏まないようにまたぎ超えて部屋をでた。
まだ朝早い時間のようだった。外で雀のさえずりが聞こえる。
自分の部屋に戻ると、鬼塚がまたしても窓際に座っている。
今度は窓の外を向いて、外に足を投げ出して座っていた。
雀のさえずりがふいに止んだ。ちいさな羽音がいくつか遠ざかっていった。
「おはよう」鬼塚が修平の方を振り返らずに言った。
修平は窓際に行って外を見た。心なしか、昨日より蕾が膨らんで見える。
「雀と話してた?」
「うん。もう行ってしもたけど。泉くんのこと話してたんや。」
「へえ。・・・ふぁあああああぁ」大あくびが出た。
「朝ご飯、作ったろか」
「ん?うん。」
あくびと一緒に出て来た涙をこすりながら返事をすると、
「よっしゃ」鬼塚は窓枠の上にたちあがって、部屋の中にとん、と降りた。
それから、
「泉くん」
「ん?」
「僕、この部屋に来てもええ?」
「もう来てんじゃん」
「これからも・・・あの、遊びに・・・。」
修平はそのときやっと、鬼塚の眼が捨てられかけた子犬みたいに不安に揺れているのに気づいた。
一年365日、あつかましいのかと思ってたけど違うのか・・・。
少しひるんだまま「うん・・・。いいけど?」というと
「ほんま?」鬼塚の顔がぱっと明るくなった。
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