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執事。エドワードの記憶
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「ねぇほら、抱っこしてみて!」
「アリア、」
「早く早く!」
その暖かな小さな身体をぎこちなく抱きとめると、彼は泣くことなくただただ満面の笑みを見せた。
「ね?かわいいでしょ?なんかね、この子甘い匂いがするの」
確かに甘い香りが微かに俺の鼻を擽る。
「みているだけで幸せね。…私たちも生まれた頃はこんな風に誰かを幸せにしていたのかしら」
「今でも君はたくさんの人を幸せにしていると思うよ」
「そうかしら。私が彼を幸せにしたいと願うほど、他の大勢の人を傷つけているわ」
「俺は誰の幸せも願ったことはない」
そう言うとアリアは俺の目をしばらく覗き込んでから笑った。
「なら、この子の幸せを願って。この子が幸せでいられるように見守って。今あなたがこの子にもらったかけがえのない幸せと優しい気持ちを、同じように与えてあげて。それがどんな形であろうと、この子はきっとあなたのおかげで幸せを感じることができるだろうから。」
「!」
それからしばらくして、アリアは息を引き取った。
若く美しい彼女の訃報に、多くの人々が悲しみ涙を流した。
彼女が愛したあの方もまた深い悲しみを背負ったのだ。
あれから9年の間、私は昔の自分を消し、アリア付きだったフラー様に執事の全てを教えてもらい、あの時の幸せをお返しする時を待っていたのです。
「ライル様」
「エドワードさん!」
アリア、この気持ちもまたこの方にお返しすべき幸せの形なのか?
「ねぇジャック。あなたきっと人を愛したことがまだないのね」
「愛?」
「愛とはね、優しくて暖かくて、それでいて残酷で冷たいの。私は彼を愛したために多くの人を傷つけたわ。結局彼のこともたくさん傷つけたし。そして愛の始まりが恋」
「恋…」
「恋はね、触れ合って、抱き合って、側にいたい。見つめていたい。あと胸が苦しくなるような痛みがあるのよ」
幼い頃から成長を見つめていたこの方に抱いた感情は、確かに暖かなものだった。
しかし、お側でお使えさせていただくようになってから、その感情はかすかに胸の痛みやざわつきを覚えるようになった。
「エドワードさん?」
「あぁ、申し訳ございません。少し考え事を。」
アリア、これが君の言う恋だったとしたら、私は一体どうしたらいい?
「大丈夫ですか?体調が悪いとか」
「っ!」
そう言って私の頬に触れたライル様の小さなお手が、私の体温を急激に上げ、同時にその小さな身体を抱きしめたいと思うのは、執事としてはもう失格なのでしょう。
「…ライル様」
幸せを返す前に、私はライル様を傷つけてしまうかもしれない。
アリア、
見ているのだろう?
教えてくれ。
私は、もう誰も傷つけたくはないんだ。
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