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はだかの王子様34
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僕は夢を見ていた。
暖かな日差しを受ける中庭で、お母様やお父様、お兄様やフラーさん、ユリールさんとかガンジさんもいて、みんなで笑い合う夢。
凄く幸せで、温かな筈なのに僕は何かが足りなくて、寂しくて、切なくて、お母様に問いかける。
『あの人は?』
『あの人って?』
名前を呼びたいのに、出てこない。
笑顔を覚えているのに、そこにいない。
お母様は困ったように微笑む。
『どうしたのライル』
『お兄様!フラーさん!あの人は、』
『ライル、疲れているんじゃ』
『ライル様?』
誰も彼のことを知らない。
僕だけが覚えている、なのに覚えていない。
『っ、そんな、嫌だ!僕は、あの人に救われた!みんなもあの人が大好きなんだよ?なんでっ、忘れないで、お願いっ、僕からあの人を』
「奪わないでっ!」
「ライル様?」
身体を起こすと、僕は柔らかなベッドの上にいた。
見覚えのある部屋。
横を見ると、心配そうに僕を見つめるフラーさんがいた。
杖はなく、長かった髭もない。
手のひらに鈍い痛みを感じて見ると、両手に包帯が巻かれている。
あの時の傷。
そして思い出す。
彼は、僕よりも酷い怪我をしていた。
「っ!っ、エドワードさんは!?」
「エドワードの部屋に…」
フラーさんがいい終わらないうちに、僕はベッドから飛び出していた。
あの時の光景が蘇る。
血だらけの彼のいない部屋。
そんなの、絶対嫌だ。
彼の部屋に駆け込むと、大柄な男の人が僕をみて驚いた顔をしている。
「ライル様!目覚められましたか!」
ベッド傍に立ったその人は、ベッドに横たわる彼のお腹に何かを塗っている。
「っ、…」
ベッドで目を閉じる彼の顔をみた途端に、涙が溢れて止まらなかった。
「ら、ライル様?」
両手で顔を覆って泣いていると、優しい声がする。
「…ライル様、どうかお泣きにならないでください。あなた様の涙は、私の胸を締め付けるのでございます。」
「っ!」
それは初めて僕らが出会ったあの日に、彼が優しく囁いてくれた言葉。
「エドワードさんっ?!」
顔を上げると、エドワードさんが僕を見て笑っていた。
僕は彼に駆け寄り抱きついていた。
「よかっ…、ほんとに、よかったっ…」
「私がついていながら、ライル様にお怪我を」
「こんなの、エドワードさんの痛みに比べたらっ、僕、エドワードさんがいなくなっちゃったらどうしようって、怖くてっ」
泣き続ける僕の頭を、エドワードさんは優しく何度も撫でる。
「お誓いしたでしょう?あなたのお側でずっとお守り致しますと、私、約束は必ず守る男ですよ」
「いい空気のとこ邪魔して悪いが、ちょっといいですか?お前の口からそんな言葉が聞ける日が来るとは、もう耐えられん!笑っていいか?」
「え?」
「普通だったら空気を読んで退室するところを、図々しく居残るところは全く変わってないなユーフォリア」
「え?」
見上げると、さっきの男の人が豪快に笑っていて、それをうんざりそうに見つめる、僕の知らない表情のエドワードさんがいて、僕の涙はどこかに吹き飛んでしまった。
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