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ひどい嵐の夜だった。
そんな日に限って切れた電球を買いに一人嵐の中、人気の無い道を歩いていた。
電球なんてなくても別に一晩くらいならパソコンの明かりだけで暮らせるのだけど、なんとなく嵐の中を歩きたくなったのかもしれない。
コンビニまでは約5分。
家を出てすぐの今でももう、ズボンは色が変わるくらいに濡れていた。
そんな中、ふと視界に何か見てはいけないようなものが見えた。
人。
正式にいえば、倒れた人。
嵐の中で野宿するなんて馬鹿ではないだろうし、こんな所で眠っているわけではなさそうだ。
「おい、死ぬぞ。」
ソレにそう声をかけてもまるで反応はない。
まさか死んでるんじゃないかとうつ伏せで倒れているその人の肩を引く。
軽い体は簡単に動いてゴロリと上を向いた。
その姿を見てぎょっとする。
血痕のついたシャツと丈の短いズボン。
それから首には長い鎖のついた赤い首輪。
まるで捨て犬みたいだ。
「…おい、しっかりしろ。」
「ゆ、…る…し、て……」
体を揺すると小さな声が聞こえた。
雨音のせいでその声はかき消されてしまう。
体温はあるから生きてはいるけれどこのままここに置いていたら体温が奪われてそれこそ命に関わってくる。
部屋の電球と、知らない少年の命。
俺の無けなしの良心が見捨てるな、なんて言うから仕方ない。
「誘拐事件なんてなるなよ。」
風で煽られてまるで意味の無い傘を地面においてその少年を抱き上げる。
濡れて重くなっているのを覚悟したのに体は軽くて気持ち悪いくらいだ。
嵐の中、今来た道を帰っていく。
これが間違いだったなんてこの時の俺は知らない。
捨て犬 と 名のない探偵
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