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薄いコーヒーを飲みながらポチが上がってくるのを待つ。
少し眠いな、と時計へ目を向けると針はもう2時前を指している。
そりゃ眠くもなるな。
相変わらず暗いリビングで欠伸をしていると、すぐにポチの足音と鎖の音が聞こえてきた。
「おまたせ。」
「おー、上がった…か…っでお前な、ちゃんと頭拭いてこいよ…!」
「拭き方忘れた。」
「はぁ…?拭き方忘れるってな、普通にタオルで拭くだけだろ。あぁ…服びしょ濡れじゃねぇか。」
「…ごめんなさい。」
急にポチの目が泳ぐ。
…そうだ、忘れてる奴に怒ってもどうしようもない。
今のは俺が悪かった。
オドオドするポチの頭を撫でながらなんて言えばいいのかわからないが無けなしの言葉で励ましてやる。
「まぁ…アレだ、忘れたなら今覚えとけ。」
「うん…!そうだね、そうだよね。」
「あっさり開き直んなよ。ほら体はもういい、頭拭いてやるからそこ座れ。」
「はーい。」
座ったポチの頭をタオルでゴシゴシ拭いてやる。
細い毛は栄養が足りてませんって感じで触ってていい気はしない。
あんな所にいてあんな格好だったんだ、まともな飯も食ってなかったのかもしれない。
…手当の後は飯か。
なかなか眠れそうにないな。
「よし、拭けたぞ。ドライヤーしてやるからそこにいろ。」
「ドライヤー?」
「髪乾かすやつ。そのままだと痛むからな。」
「髪乾かすやつ…なるほど、初体験だね。」
「じゃあ初体験いくぞ。」
ドライヤーの先をポチへ向けスイッチを入れた瞬間、ガクンとその体が揺れる。
次の瞬間には今目の前にいたはずのポチが暗闇のリビングの向こうへ逃げていってしまっていた。
「…おい、どうした?」
「それ…苦手かも。」
「は?ドライヤーが?」
ぽかんとしてしまう。
別にそんなに何かやらかした訳じゃない。
普通に髪にドライヤーをあてただけだ。
…熱か?それとも音?風?
「それ、しないと死ぬ…?」
「いや死なねぇけど髪バサバサなるぞ。」
「じゃあ自然乾燥でいいよ。バサバサ気にしない!」
「お前がいいなら別にいいけど…ドライヤーが嫌いって本当に犬みたいだな。」
「…あはは。」
暗闇から帰ってきたポチの顔が、まだなにかに恐れているような気がして。
引きつった笑顔がどこか気持ち悪かった。
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