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濡れた髪を耳にかけてやりながら顔を覗き込む。
…そろそろ手当してやるか。
「どっか痛むとこあるか?」
「ないよ。」
「それじゃ見えるとこだけ手当するから。あー明るいとこいっとけ。」
「廊下?」
「あぁ。」
ポチへそう指示して暗闇のリビングへ向かう。
携帯の明かりだけでなんとか救急箱を見つけ出しポチの元へ帰る。
ポチはお行儀よく廊下で一人座って俺を見上げてくる。
「手当は覚えてるか?」
「うん!こう唾をつけて…」
「うわ、やめろやめろ…!それ逆に菌入るだろ。」
「えぇ、そうなんだ。いつもこうしてたのに。」
腕の傷をベロベロ舐め出すポチを慌てて止める。
指先の傷くらいならまだしも腕のこんなでかい傷舐めるなんて映画くらいでしか見たことねぇぞ。
まぁ間違ってはないんだけどな。
不服そうなポチにため息をついて救急箱を開く。
「消毒…は風呂入ったしいいだろ。絆創膏貼ってやるから。」
「絆創膏?」
「これも忘れたか?傷口広がらないように貼っとくヤツ。あと菌とか入らないようにな。」
「なるほど。」
「痛かったら言えよ。」
「はーい。」
いくつかある絆創膏を新しそうな傷へ貼っていく。
頬の傷、腕の傷、足や腰の傷にも。
切り傷や擦り傷はこうやってしてやれてもやけどはどうするべきか分からない。
「よし…火傷ってどうするべきなんだこれ。」
「わかんない。」
「待ってろ、ちょっと調べるから。」
携帯で 火傷の治療の仕方を調べる。
ポチの火傷の深さは…2度熱傷ってやつだ。
火傷してすぐに冷すのがいいらしいがもう手遅れだろう。
「ガーゼして病院行けって書いてるな。」
「病院?」
「あぁ。…でも、行かない方がいいんだろうなお前の場合。」
「行かなくても死なない?」
「死ぬ時もあるけど多分今は死なないな。」
「それじゃ行かなくていいよ、死にそうになったら連れてって。」
「…お前の基準死ぬかどうかなんだな。」
無邪気にニコニコ笑うポチの髪を撫でながら何故か心苦しくなる。
記憶がなくなっても傷は消えない。
病院に行って治してもらうことも出来ない。
「それじゃ、手当は終わりだ。」
「やった、次は何する??」
俺がこいつに出来ることは新しく記憶を作ってやるくらいで。
…今はそれだけでいいか。
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